7月9日/貿易投資委員会(委員長 槙原 稔氏)
貿易投資委員会では、日欧サミットのために来日した欧州委員会のラミー委員(貿易担当)より、EUの通商戦略とWTO新ラウンドの行方等について説明をきいた。
現在、われわれは、止まることを知らないグローバライゼーションの波の中にあり、「変化」に直面している。日本は改革の真っ只中にあり、たいへん厳しい状況にあることを理解している。ヨーロッパでも同様に不確実性の時代を経験している。日欧関係はこれまでになく良好であるが、このような時代であるからこそ、日欧がこれまで以上に連帯感を持って「変化」に取り組んでく必要がある。
(1) 経済界への期待
日本とEUの協力もあって、WTO新ラウンド(ドーハ開発アジェンダ)が立ち上がった。まだ出発地点に立ったばかりで、具体的な問題にはこれから取り組んでいかなければいけない。現在のところ交渉の歩みは非常に遅く、来年のカンクン閣僚会議までに交渉を加速化させなければならない。ジュネーヴの議論に勢いを与える上でも、日本経団連のような団体による外部からの積極的な働きかけが必要だ。日本経団連には、欧州委員会をはじめ各国政府に対し、ぜひ、交渉の進展が必要であることを主張していただきたい。われわれは、経済界の声を必要としている。
(2) 新ラウンドを取り巻く懸念
新ラウンドの進捗状況が捗捗しくない理由は3つある。
第1に、途上国が貿易の自由化が新ラウンドを自分達のメリットになると考えていないことがあげられる。第2に、先進国が途上国のためにどれだけ歩み寄るかわからないということである。第3に、米国の国内偏重の保護的な動きである。
第3の点については、EUは、TPA(通商交渉権限)、鉄鋼セーフガードならびに農業補助金増加の問題に対して懸念を抱いている。日欧政府は、一刻も早く米国議会がTPAに合意することが必要との見解で一致している。セーフガードについても、是正を米国に呼びかけるべく、日欧が協力していく必要があろう。
鉄鋼問題については、EUは3つの戦略で対処していく。第1に、なるべく多くのセーフガード対象除外品目を勝ち取るということである。第2に、セーフガードの補償を勝ち取るということである。そして第3に、長期的な解決策として、世界的な生産過剰問題に取り組むことである。
1980年から1990年代にかけ、EU(当時EC)の市場統合とNAFTAの発効を傍観してきたアジアが、21世紀は地域貿易の議論で最も活発な地域になろうとしている。この動きに関心を持っている。