経済くりっぷ No.3 (2002年8月13日)

7月10日/社会貢献推進委員会(委員長 武田國男氏)

地方分権を社会貢献活動との接点から考える

−市民・企業・行政との協働のまちづくり


地方分権の流れの中で、個性あふれるまちづくりのために、住民やNPOとの連携を強化する自治体が増えてきている。社会貢献活動を推進する企業にとっては、「地域社会」の動きを捉えることも重要になる。市民と行政の協働において先進的な自治体として知られている、千葉県我孫子市の試みについて福嶋浩彦市長より説明をきき、懇談した。

○ 福嶋我孫子市長説明要旨

1.協働のまちづくりはなぜ必要か

地方分権で、仕事は国から都道府県、市町村へと降りてくる。しかし、末端の市町村が大きな政府を目指すわけにはいかず、徹底して民に分権していくしかない。また、公共サービスを行政が独占する時代ではなくなっている。行政独占の公共サービスは、社会に一定の安定や安心感をもたらしたが、行政に無駄や非効率を蓄積してきた。同時に、行政を批判し要求するだけの市民を生み出してしまった。21世紀には、こうした行政と市民の関係を乗り越えて、自立した対等なパートナーとして責任を分担し、協働でまちづくりに取り組むことが大切になってきている。

2.協働における行政と市民の関係

協働のまちづくり推進には、何のために、行政と市民がどんな関係で協働するのか、を明確にする必要がある。さもなければ、行政は市民を安上がりの労働力としてしか見なくなり、市民による自主的な活動も、協働の名の下に行政依存になってしまう。
市民参加を推進すれば、必ず市民の対立を生む。市民は異なる意見の人々と話し合いを通して合意する力をつけ、行政は市民の話し合いをコーディネートする力をつけねばならないが、どちらも未熟である。対立のないテーマでの市民参加は、本格的な協働に向けた練習問題である。

3.外からの風を行政に持ち込む

市民感覚を持った行政にしていくため、職員採用と補助金の決定という、いわば聖域にも市民に参画してもらっている。また、民間での経験のある人の採用を睨み、年齢を35歳までに引き上げた。新卒は、入った時は優秀でも、数年経つと先輩職員と同じ感覚になっている。一方、民間での経験のある職員は、いい意味で、違和感をもちながら仕事をしている。民間での経験のある職員はまだ点だが、これが層になれば、市を変えていく力になるだろう。

4.パートタイマー市民から全日制市民へ

我孫子市が人口急増した時代に移住した団塊の世代は、日本や世界の第一線で活動しているが、現在は寝に帰ってくるだけの「パートタイマー市民」となっている。この人々が定年退職して「全日制市民」となった時に我孫子を中心に活動してもらえる環境を整えなければならない。情報提供や人と人をつなぐネットワークづくりを支援し、市民の潜在的な力を活かしていきたい。
しかし、企業に勤める人々には、現役の時から、全日制市民として地域で生活し、役割を果たすことを期待したい。

《担当:社会本部》

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