経済くりっぷ No.3 (2002年8月13日)

7月23日/日タイ貿易経済委員会(委員長 安居祥策氏)

日タイ貿易経済委員会2002年度総会を開催


日タイ貿易経済委員会は7月23日、2002年度総会を開催し、2001年度事業報告・収支決算、役員改選、2002年度事業計画・収支予算、委員会規約の一部改正を原案通り承認した。また、議案審議に先立ち、カシット・ピロム駐日タイ大使から「日アセアン包括的経済連携構想に対するタイの期待」と題して話をきいた。

○ カシット大使説明要旨

  1. タイ政府の公式見解というよりは、個人的見方として説明したい。

  2. アセアンとの包括的経済連携に関する日本の提案に基づき、すでに日・アセアン間で予備的な協議が始まっている。構想実現に向けては、日本と加盟各国との二国間の協議および日本とアセアンとの協議という2つのアプローチがあり、この2つをリンケージさせることが大切だ。しかしまずは、加盟各国との二国間の交渉を先行させるのが現実的だろう。すでに日本が締結したシンガポールとの経済連携協定が交渉の基盤となる。日タイ間では、7月12日に東京で行われた日タイ経済パートナーシップ協議の結果、作業部会を設置して包括的経済連携に関する検討を行うこととなった。

  3. 「包括的」というからには、どんな経済セクターも除外せず、関税問題も非関税問題も全て取りあげるべきである。また、英語で「パートナーシップ」と銘打っている以上、援助国と被援助国の関係ではなくギブアンドテイクの関係である必要があり、アセアン側からも日本に与えるものがなければならない。さらに、日本とアセアンの間には官民双方のレベルで様々な協議の枠組みが存在し、それら既存の枠組みの中で蓄積された知見や実績は、包括的経済連携の基礎となる。できるだけ速やかに協議が進むことが期待される。

  4. 包括的経済連携の最も重要な要素は自由貿易協定(FTA)である。また、比較優位に基づく分業が一層促進されることが期待される。連携すべき分野としては、FTAの形成に加えて投資の自由化およびその促進、基準の相互認証、検査制度の統一、税関手続きの簡素化、ビジネスマンの移動の円滑化、観光促進、人材育成強化、中小企業育成、科学技術の開発協力、技術移転などが挙げられる。また、絶対に除外したり避けるべきでないものとして、農業分野やセンシティブな産業への猶予期間、規制緩和がある。特に農業は、除外してしまえば包括的経済連携の意味が全くない。タイは日本の農家と競争しようと思っているのではなく、日本への他の農産物輸出国と公正な競争が行えることを望んでいるだけである。

  5. 日アセアン包括的経済連携は、中国の圧倒的な力に抗する有効な手段となりうる。日本の指導力、リーダーシップに期待している。そして、包括的経済連携による協力を、アジア全体の力の強化やアジアの地位の向上につなげたい。さらに、日タイ両国に関しては、特別なパートナーシップ関係の強化にもつなげたいと考えている。

《担当:国際協力本部》

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