経済くりっぷ No.3 (2002年8月13日)

7月4日/日本イラン経済委員会(委員長 増田信行氏)

日本イラン経済委員会2002年度総会を開催


日本イラン経済委員会では2002年度総会を開催し、2001年度事業報告・収支決算、2002年度事業計画・収支予算を、原案通り承認可決した。当日は、外務省の奥田紀宏 中東アフリカ局審議官より、最近のイランの政治経済情勢と日イラン経済関係について説明をきくとともに懇談した。

I. 奥田審議官説明要旨

1.イランの内政と国内経済情勢

ハタミ大統領に対する保守派からの圧力は依然として厳しい。また人口の大部分を占める若年層は、ハタミ大統領の下での改革の遅さにフラストレーションを感じているが、今後とも改革を指向していくだろう。
国内経済は、GNP成長率が4.8%であった。インフレ率は11.4%とかつてより落ち着いている。高油価により国家収入も安定しており、200億ドルを超えていた対外債務は2002年3月には71億ドルまで減少している。しかし失業率は16.1%と高く、新規雇用の創出がイラン経済にとって大きな課題である。政府は2003年3月までに30万人の雇用創出のための緊急対策を採択している。
ハタミ大統領の外交努力もあり、米国以外の外国企業のイラン進出が目立つ。2002年5月、新外国投資法が成立した。ただし投資・海外送金には政府の承認が必要であることから、施行規則の制定や実際の運用を見極めなければならない。

2.対外関係

9.11テロ以降、アフガニスタン問題に対するイランの対応によって、対米関係改善の期待が高まったが、2002年1月のブッシュ大統領の一般教書演説の「悪の枢軸」発言がこれに水を差した。米国としても、イランをイラクと同様に扱うつもりはないようであるが、当面関係改善の機運は遠のいたと見られる。
EU内では、イランとの貿易協力協定の締結交渉開始に合意し、交渉を秋頃から始める動きがあるなど、関係が深まっている。

3.対日関係

日本は、イランを中東地域で安定勢力たり得る大国と捉えている。二国間貿易では、イランにとって日本は第1の輸出相手国、日本にとってイランは、第3の石油供給国(シェア11%)である。
川口外相が初の外遊先として2002年5月にイランを訪問するなど、日本はイランとの関係強化に努めている。アフガニスタン復興では、麻薬撲滅など日イラン両国が協力できる案件を発掘中である。また、イラン文化週間や映画祭、女性交流など文化的な面でも協力が求められている。

II. 質疑応答

日本経団連側:
中国のイランへの接近についてどう考えるか。

奥田審議官:
2000年6月にハタミ大統領が中国を訪問し、2002年4月には江沢民主席がイランを訪問した。中国はイランのエネルギー資源に注目している。両国はエネルギー協定や二重課税防止協定、投資協定を締結している。今後の経済関係強化の動きに注目していく必要がある。
《担当:国際協力本部》

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