経済くりっぷ No.3 (2002年8月13日)

7月23日/日本・インドネシア経済委員会(委員長 上島重二氏)

日本・インドネシア経済委員会2002年度総会を開催


日本・インドネシア経済委員会では、7月23日に2002年度定時総会を開催し、2001年度事業報告・収支決算、2002年度事業計画・収支予算ならびに役員の改選と規約の改正につき審議し、原案通り承認した。当日は、佐藤百合 アジア経済研究所主任研究員より、メガワティ政権の現状と展望について、説明をきくとともに懇談した。

○ 佐藤主任研究員説明要旨

1.メガワティ政権の特徴

メガワティ政権以前のハビビ、ワヒド両大統領は、改革を急ぐあまり、政治社会面での不安定を招く結果となった。メガワティ政権は、その反省を踏まえ、「改革優先」から「安定優先」路線をとっている。その結果、これまでのところ、政治の安定と同時に、経済面でも中程度の成長路線に乗っている。
メガワティ政権が相対的に安定している要因としては、

  1. イスラム勢力を政権へ取り込んだこと、
  2. 国軍の復活、
  3. 対米関係の雪解け、
  4. ワヒド前大統領罷免時に混乱を招いたことへの当事者間の反省、
などが挙げられる。一方、改革が進まない要因としては、
  1. メガワティ大統領の政治スタイルが、時間をかけてコンセンサスを醸成するものであること、
  2. 政党政治の台頭により、改革の理念より政党の利害が優先されていること、
  3. 変わらぬKKN(汚職、癒着、身内びいき)体質、
などがある。

2.経済情勢について

2001年以降、インドネシアの貿易額、外国投資受入額は、落ち込んでいる。しかし、2億人市場である国内消費が好調であるため、2001年は、3.3%のGDP成長を果たした。かつてのスハルト政権時代は、外国投資の流入に牽引されて、年平均7〜8%の経済成長が可能であったが、現在は内需主導による年平均3〜4%の成長軌道上にある。

3.今後の政治、経済面の展望

憲法改正により、2004年の次期大統領は、国民投票によって選出され、メガワティ再選の可能性は大きい。大統領選出機能を失う国民協議会(MPR)は、政治力を弱めるだろう。アチェやイリヤンジャヤの分離独立問題について、政府は、特別立法により、天然資源収益を当該地方に厚く配分する枠組みをつくり、問題の解決を図っている。地方の治安の乱れとともに復権してきた国軍が、暴走することなく、バランスのとれた治安維持機能を果たす必要がある。インドネシアの政治システムは、現在、試行錯誤の時期である。2009年に行われる予定の大統領選挙が円滑に行われて初めて、インドネシアの民主主義は定着に向かうだろう。
経済面では、域内経済統合、中国の台頭の中で、どこにインドネシアの産業競争力を見出せるかが課題である。インドネシアは、中国を市場および投資供給者とみているが、投資誘致の上では、インドネシアは部品供給能力や労働生産性など、中国と比較した際の弱点がある。競争力強化に向けての有効な政策を打ち出す必要がある。

《担当:国際協力本部》

くりっぷ No.3 目次日本語のホームページ