経済くりっぷ No.3 (2002年8月13日)

7月24日/アメリカ委員会

「テロとの戦い」と「企業の不正会計との戦い」に直面するブッシュ大統領


アメリカ委員会では、外務省北米局の宮島昭夫 北米第一課長を招き、最近の米国政治情勢に関する懇談会を開催した。

○ 宮島北米第一課長説明要旨

1.米国内政

同時テロ以降、ブッシュ大統領の高支持率の継続は米国史上にも類がない。1月の一般教書演説では、「悪の枢軸」発言とともに米国をテロの脅威から守ることが最大の課題とされ、6月には国土安全保障省の新設が提案された。また統計では、米国民の7割以上がテロ再発への恐怖を感じている。
米国民のもう一つの関心は、企業の不正会計問題だ。同時テロ以降、ブッシュ大統領が初めて守勢に回った問題である。このように、ブッシュ大統領はテロと企業の不正会計という二つの大きな戦いに直面している。

2.外交

ブッシュ政権は日本を含む同盟国との関係を重視する外交を進めている。一方で、クリントン政権が進めていた政策に対し「米国の利益にならない」と公言して憚らないなど、米国第一主義・ユニラテラリズム的な側面があり、特に欧州等が問題としている。
同政権はテロとの戦いを最重視することをカナナスキス・サミットで印象付けた。「悪の枢軸」と呼ぶ3ヵ国への対応は、今後の外交の軸となるだろう。また、同時テロ以降大きく変わったのが、ロシアとの関係であり、戦略兵器削減合意などで関係強化が進んでいる。
テロとの関係で重要な中東和平への対応は、ブッシュ大統領が中東和平プロセスを提案したことで、米国内では一つの区切りがついたとの雰囲気である。また、ブッシュ大統領の支持基盤であるキリスト教右派がイスラエルロビーと結びつく傾向を見せている。ユダヤ系団体は民主党支持が大勢だが、中間選挙を控え、無視できない流れである。

3.今後の課題

まず、テロ再発への懸念である。さまざまなテロ計画の存在は確実であり、表には出ないものの、その計画を潰す動きもある。
2つめは、イラク問題である。米国政府は何ら決定を行っていないとしているが、米国民の7割以上がイラク攻撃を支持しており、ワシントンの雰囲気は、攻撃の是非でなく、いつ行うかに議論が集中してきているという印象である。
3つめは、米国経済である。米国経済の動向は、今後の日米関係や米国外交に大きなインパクトを与えるだろう。
もう一つ別の課題として、第二次大戦で捕虜となった米国人が日本で強制労働をさせられたとして、日本企業を提訴する動きがある。日米両政府とも「サンフランシスコ講和条約で解決済み」との立場は明確だが、連邦議会では原告を助ける法案も提出されており、予断を許さない状況である。

《担当:国際経済本部》

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