経済くりっぷ No.4 (2002年9月10日)

7月31日/日本ブラジル経済委員会(委員長 室伏 稔氏)

日本ブラジル経済委員会2002年度総会を開催


日本ブラジル経済委員会では2002年度総会を開催し、2001年度事業報告・収支決算、2002年度事業計画・収支予算、役員改選と規約の一部改正を原案通り承認した。当日は、カナブラヴァ駐日ブラジル大使より、最近のブラジルの政治経済情勢と日伯経済関係について説明をきくとともに懇談した。大使は、ブラジルの経済ファンダメンタルズの底固さを強調した。

I.カナブラヴァ大使説明要旨

1.ブラジルの経済情勢

レアルプラン導入後8年が経過し、全ての経済指標はブラジル経済の安定性を示している。2002年の経済成長率は2〜2.5%、貿易黒字は50億ドル、経常赤字は207億ドル(GDPの3.8%。前年比0.8%減)、海外からの直接投資は180億ドル、インフレ率は5.5%と予想される。
今年10月の大統領選挙に関連して、海外機関投資家は、野党候補の支持率が高いという世論調査結果に基づいて、ブラジルリスクを評価しているが、これは誤りである。
2000年5月に制定された財政責任法によって、市町村レベルにおいても財政節度が守られている。また、ブラジルは、IMFと約束した財政目標を厳密に守っており、2003年にはGDPの3.75%の財政黒字となる見込みである。ブラジル経済は、成熟と安定を兼備した政治体制と法制度の下で機能しており、現在の経済安定をもたらした改革は、政府側の取組みではなく、ブラジル国民全体の約束事である。教育、農地改革、IT普及などの面でも格段の進歩がみられる。従って、次期政権はブラジル社会に深く根付いた信頼性の遺産を継承し、南米大陸の安定要素としてのブラジルの地位を守る義務を負う。

2.ブラジルの政治情勢

10月6日に総選挙が実施され、1億1,500万人の有権者が、正副大統領、州知事、上院の3分の2の議席、下院と州議会の全議席を改選する。政治の透明性、責任性の確保が重要であり、選挙後の2003年には、政治と行政の継続性が保たれるだろう。選挙には全面的に電子投票を取り入れる。

3.対日関係の強化

ブラジルは、日本との関係強化を望んでいる。日伯間で拡がりつつある経済貿易面での距離を縮める努力を、双方が一層進める必要がある。日本は今後とも、ブラジルのアジア政策の拠点であり続けなければならない。

II.質疑応答(要旨)

日本経団連側:
FTAA(米州自由貿易地域)の見通しについておきかせ願いたい。

カナブラヴァ大使:
FTAA締結について、現政権のみならず、大統領候補者全員の意見は完全に一致しており、政権が代わっても積極的に取り組み続ける。しかし、鉄鋼や農産物でみせた米国の一国主義・保護主義、自由貿易を阻害する動きに対しては、断固たる態度で臨む。一方で、現在のブラジルとアジア諸国やEUとの良好な関係を、今後とも維持・拡大していきたい。FTAAが排他的な性格をもつことで、こうした関係が損なわれることは、絶対にあってはならない。
《担当:国際協力本部》

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