経済くりっぷ No.4 (2002年9月10日)

8月23日/企業行動委員会

実効性のある企業不祥事の防止に向けての検討を開始


1996年に企業行動憲章を改訂し、その実行の手引きの作成などにより同憲章の周知徹底に努めてきているが、依然として企業不祥事は後を絶たない。そこで、日本経済新聞社の小島明常務取締役論説主幹より「最近の企業不祥事について」と題して話をきいた。その後、今後の対応について意見交換し、実効性のある企業不祥事の防止に取り組む必要があるとの観点から当委員会の下に企画部会を設けて検討を行うこととした。

○ 小島論説主幹講演要旨

1.海外の厳しい眼

最近の企業不祥事は、3つの側面があり、整理して議論する必要がある。第1は、不祥事が起きたときの企業の危機管理や経済界としての対応の問題がある。第2は、不祥事を起こさない。予防の問題。第3は、なぜ企業不祥事が頻発しているのか、その原因を解明する必要がある。
そして、全体としては日本の社会システムが問題となる。
まず、日本は法治国家かということが問題で、日本は必ずしも法治国家となっていない。行ってよいことや悪いことが明文化され、誰にでも分かるようになっていない。日本では何が許されているのかをお役所に聞かなければならず、裁量行政である。
また、大和銀行NY支店巨額損失事件以来、日本の銀行が海外で資金調達するときにジャパンプレミアがつく、あるいは、ファイナンシャルタイムズが最近「隠れた日本」ということで二重帳簿の日本、本音と建前の日本の記事を掲載するなど海外の日本を見る眼は厳しくなっている。スイスのビジネススクールであるIMDの2002年度国際競争力年報では、日本の企業経営における倫理的行動は49ヵ国中、28番で、1位はフィンランドである。また、ワールドエコノミックフォーラムによる政府の不透明度は、昨年の調査では日本は49ヵ国中、最下位であった。このような不透明な仕組みの中で日本企業は活動をしなければならない。
日本の問題は基本的には情報公開に通じる。日本に隠蔽体質があり、人の噂も75日として忘れてしまう。しかし、日本経済が実力を出し、グローバル化すればするほど、これまでのやり方は根本的に問題となる。

2.透明性が重要

まず、出発点として、日本において健全な民主制度と経済が行われるためには、透明性が重要であり、情報公開をしなければならない。これは企業だけでなくあらゆる層において共通の問題としてある。また、日本の経済犯関係の刑罰が世界と比べて相対的に軽い。刑罰をどう考えるか、考え直す必要がある。次にトップのリーダーシップの問題があり、日本は仕事はボトムアップというが、ゆがんだ形でトップダウンがなされている。人事権をもつトップがいれば、皆上を向く。ドラッカー教授はリーダーシップとは、手段であり、仕事であり、地位や特権としてみるより責任として見るべきであると指摘している。

《担当:社会本部》

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