経済くりっぷ No.5 (2002年9月24日)

9月5日/第50回北海道経済懇談会

豊かな日本の創造と北海道の経済再生に向けて


日本経団連・北海道経済連合会(道経連)共催の標記懇談会が札幌市において開催された。地元経済人約150名の参加のもと、日本経団連側は奥田会長、奥井・槙原・香西・西室・柴田の各副会長、前田企業人政治フォーラム会長代行が出席し、「豊かな日本の創造と北海道の経済再生に向けて」をテーマに、道経連首脳と最近の経済動向、社会基盤整備、地域産業の育成・強化等について活発な意見交換を行った。

I.北海道側発言要旨

1.開会挨拶
  泉 誠二氏〔道経連会長/北海道電力会長〕

北海道経済は、GDPの伸び率はマイナスで推移し、失業率も全国平均より悪い。さらには、国の公共投資削減等の影響も加わり、今また大きな危機に直面している。
こうした中、公共事業に過大に依存した体質から脱却し、北海道経済の自主・自立を目指し、産業クラスター創造活動等、「産業の育成と強化」に努めている。
一方、社会資本整備については、道内の発展と国への貢献に一定の役割を果たすものについては、引き続き整備を進めるよう要望する。また、農業や酪農については、BSEや食品関連問題による影響で、北海道ブランドの信頼が大きく揺らいだ。これを踏まえ、会員企業と企業倫理について改めて申し合わせたところである。

2.来賓挨拶
  堀 達也氏〔北海道知事〕

国の構造改革が進められる中、BSEや食品関連産業の問題で、北海道経済は一段と厳しい状況を迎えている。とりわけ雇用問題は深刻である。こうした中、1998年より、自立型経済への転換をめざし、道独自の経済構造改革を進めている。本年4月には産業政策推進室、5月には経済戦略会議を設置し、新産業の創出やマルチワークシステム、構造改革特区構想の提案等に取り組んでいる。また、建設業のソフトランディング対策も積極的に進めている。
今後ますます北海道の価値・可能性に磨きを加え、「道州制」など、地方分権型モデルの先駆となるべく活動していきたい。

3.北海道経済の現状と課題
  我孫子 健一氏〔道経連副会長/北海道空港社長〕

北海道経済の状況は、消費者の低価格志向、BSE問題や食品関連産業の問題等の影響で、大型店の販売額、公共工事ともここ3年、対前年比がマイナスとなった。また、この1〜3月の完全失業率は、全国最悪の7.2%であった。
こうした厳しい状況から脱却し、北海道経済の自立的な発展を図っていくためには、高速道路や新幹線、空港等、社会資本の整備・拡充を進めることが重要である。
一方、地方税制については、地方分権の観点から、東北経済連合会と北陸経済連合会と共同で、「地方経済の自立度を高めるためには、国税から地方税に税財源を移譲し、地方財政を充実することが必要である」とのとりまとめを行ったところである。
また、特区構想については、地域経済活性化を目指し、「ベンチャー創出特区」、「エネルギー特区」、「農村再生特区」、「森林クラスター特区」等を提案している。

4.今後の住宅政策のあり方
  林 光繁氏〔道経連副会長/十勝毎日新聞社社長〕

北海道で研究・普及してきた、高気密・高断熱住宅の「新省エネ基準」は、1999年から「次世代省エネ基準」として全国展開されるようになった。シックハウス症候群や結露等の問題もほぼ克服され、本土においても、約20%の省エネ効果が期待できる、高気密・高断熱住宅が普及してきている。
また、今最も注目されているのが、雪氷エネルギーである。雪1トンは原油に換算して10リットル相当の冷熱エネルギーを有している。環境にやさしい雪氷エネルギーの利用促進のためには、この設備を建蔽率、容積率に組み入れない、また、固定資産税の対象外とするなどの規制緩和措置が必要である。

5.産業再生への取組み
  藤田 恒郎氏〔道経連副会長/北海道銀行頭取〕

現在、「産業再生」取組みとして、「産業クラスター創造活動」と「次世代型産業技術の創出活動」を展開している。その中でも、北海道の優位性を活かせる、糖鎖研究やバイオインフォマティクス分野等の「次世代ポストゲノム」研究に力を入れている。本年4月に産学官協同で「次世代ポストゲノム研究推進協議会」を立ち上げ、国内外から注目される「中核的研究開発拠点」の形成を目指している。
また、「リサーチ&ビジネスパーク」構想の具体化のひとつとして、「北大リサーチ&ビジネスパーク」の創設を提案し、その実現に向けて検討を進めている。
こうした「産業新生」の取組みを一層進めていくために、

  1. 研究開発促進のための各種制度の創設、
  2. 産学官連携促進のための各種制度の創設、
を要望していきたい。

6.サハリン州との経済交流について
  大森 義弘氏〔道経連副会長/北海道旅客鉄道会長〕

昨年4月にユジノサハリンスク市に開設した「北海道ビジネスセンター」は、大型プロジェクトの情報収集・発信、合弁企業の照会対応等を行い、高い評価を得ている。また、「北海道サハリンビジネス交流支援会」と連携し、サハリンと経済交流を検討する企業を支援している。
一方、今後増加するサハリンプロジェクト関係者が、北海道を「会議の場」、「家族を含めた余暇の場」として、更には本国への帰国の中継地点として活用できるよう、「観光インバウンド」に向けた諸検討を進めている。

II.日本経団連側発言要旨

西室副会長より当面の経済運営と税制改革、奥井副会長より今後の住宅政策のあり方、前田企業人政治フォーラム会長代行より日本経団連の政治への取組み、香西副会長より構造改革特区構想の推進、柴田副会長より技術開発の推進に向けた取組み、槙原副会長よりわが国の通商問題をめぐる課題についてそれぞれ説明があった。
最後に奥田会長から、北海道におけるさまざまな取組みを踏まえつつ、日本経団連として経済再生に向け積極的に取り組んでいくとの総括があった。

《担当:総務本部》

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