経済くりっぷ No.5 (2002年9月24日)

9月5日/アジア・大洋州地域委員会(共同委員長 茂木友三郎氏)

ASEAN諸国と一層緊密な関係を構築すべき


アジア・大洋州地域委員会では、企画部会で取りまとめた「日・ASEAN包括的経済連携構想の早期具体化を求める」(案)の審議を行った(同意見書案は9月17日の理事会で承認された)。同審議に先立ち、愛知淑徳大学の真田幸光教授より「ASEAN諸国の安定・発展と日本」と題して話をきいた。

I.真田教授説明要旨

1.東アジアの経済動向

東アジア経済においては、中国が一人勝ちの様相を呈しており、2001年のGDP成長率も7.3%を記録した。中国には先端技術を有する企業・技術者が育っているほか、人件費を低く抑えられることから、一国で雁行型経済を構築できるとも見られている。東アジア諸国の経済見通しとしては、米国経済やIT景気の回復を受け、日本と香港を除いてはかなりの回復を見せるだろう。

2.ASEANをめぐる動き

アジア通貨危機以降、中国がASEANとの関係拡大を目指す動きを見せており、中・ASE AN自由貿易協定締結に向けた動きもその一つである。ASEAN自身も、中国、日本、欧州などとバランスを取りながら新たな関係の構築に努めている。
ASEAN各国の動きとしては、ベトナムの潜在力の高さから、米国が自国企業のベトナム進出を支援している。また、ASEAN諸国におけるイスラム勢力の存在を忘れてはならず、マレーシアの動きも注視する必要があろう。

3.ASEANの重要性

中国経済の潜在力に対する企業の期待は高く、本年1月〜6月の外資企業による新規設立は1万社を超えている。しかし、リスクヘッジの観点から、わが国企業にとって中国が投資先として最適かどうか、ASEANとの相対比較の上、再度考え直す必要がある。特に、わが国企業はASEANとの関係が深く、数々の成功体験を有している。ASEANは、生産拠点としてだけでなく、市場としても重要である。そうした中で、サプライ・チェーン・マネジメントの質的向上を図る上でも、ASEANと中国を合わせた中での最適地生産を考え、相乗効果を狙った戦略を策定する必要がある。
わが国としては、中国、韓国との関係構築も重要だが、ASEANは、エネルギーや安全保障の面でも重要なパートナーであり、まずASEANとの関係を強化することが現実的である。

II.意見書要旨

東アジアにおける貿易自由化の動きが活発化する中で、ASEANとの貿易投資関係のあり方も早急に検討する必要がある。わが国経済界としては、

  1. 東アジアのバランスある発展、
  2. 対象分野と対象国の包括性の重視、
  3. 国内構造改革の促進、
という観点から、日・ASEAN包括的経済連携構想の早期具体化を強く求める。

《担当:国際協力本部》

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