経済くりっぷ No.6 (2002年10月8日)

9月20日/第35回東北地方経済懇談会

豊かな日本の創造と東北産業経済の再生を目指して


日本経団連・東北経済連合会(東経連)共催の標記懇談会が仙台市において開催された。地元経済人約300名の参加のもと、日本経団連側からは、奥田会長、奥井・森下・西室・樋口の各副会長、前田企業人政治フォーラム会長代行が出席し、東経連首脳と意見交換を行った。

I.東経連側発言要旨

1.開会挨拶
  八島俊章 氏〔東経連会長・東北電力会長〕

東北地方の経済については、誘致工場の閉鎖や事業統合、産業の空洞化などを背景に、雇用や個人消費が低迷するなど、依然、予断を許さない状況にある。この厳しい状況を克服していくため、新時代にふさわしい東北経済を自らの手で再構築していく必要がある。その一環として、北海道・北陸の両経済連合会と「産業新生を支援するための諸施策の推進」など共通する課題や政策を取りまとめ、政府関係方面へ要望した。
さらに、東経連では、東北新世紀ビジョン「ほくと七星構想」に基づき、(1)東北産業経済の再生、(2)県境を越えた広域連携の推進、(3)国際交流と国際観光事業の推進を最重要事業と位置付け、活動を展開している。

2.東北産業経済の再生に向けた取組み
  松村富廣 氏〔東経連評議員会議長・NECトーキン相談役〕

産業の空洞化の急激な進展に対応すべく、東経連では、地域産業経済の国際競争力の強化を基本に据えた「東北産業再生プログラム」の策定に取り組んでいる。その先行的活動として、本年7月に「産学連携マッチング委員会」を組織し、東北地域の優れた研究シーズの地元企業への技術移転を通じた、地域の産業クラスターの構築と企業の活性化に乗り出した。また、昨年設立した東北ベンチャーランド推進センターを中心に、知的財産分野での戦略強化を含め、今後成長が期待される地元ベンチャー企業に対し、支援を行っている。

3.東北における環境問題の取組み
  勝股康行 氏〔東経連副会長・七十七銀行会長〕

青森・岩手県境等における産業廃棄物の大量不法投棄に端を発し、産業廃棄物税及び搬入課徴金の導入が検討されてきた。これらの導入は、東北地域の企業に大きな影響を与える問題であり、東経連としても検討を進め、(1)リサイクル目的の廃棄物への課税、課徴金徴収は対象外とすること、(2)リサイクルに積極的に取り組んでいる企業を優遇すること、(3)別途不法投棄対策を強化・徹底することなどを関係自治体に要望してきた。この結果、今般、北東北3県で合意された具体的な施行内容において、一定の成果を得ることができた。
また、循環型社会構築に向け、廃プラスチックのリサイクルのあり方に関する提言や事例集の作成、欧州への調査ミッションの派遣などの活動を進めており、さらに今後は、廃棄物の広域的処理のためのネットワーク構築について検討を行う。

4.地方分権改革の推進
  齋藤育夫 氏〔東経連副会長〔岩手銀行会長〕

政府の「地方分権改革推進会議」の中間報告(2002年6月)で示された、「国の縦割り行政からの開放による地域行政の総合化」や「国の関与の縮小、地方の権限と責任の大幅拡大、それらに基づく税源配分の見直し」などは、われわれとしても賛同できるものであり、早期の実現を望んでいる。
東経連でも、昨年度、北海道・北陸の両経済連合会と共同で提言を取りまとめるなど、地方分権の推進に取り組んでいる。地方分権を進める上で、(1)財源移譲の早期実現、(2)自主財源比率を高めることによる地方交付税への依存度の引下げ、(3)政策立案力を持つ人材の育成・確保が強く求められる。

5.東北における国際交流事業の推進
  林 光男 氏〔東経連副会長・青森三菱電機機器販売社長〕

21世紀の東北づくりを進める上で、地域との交流を促進することが重要であり、以下の国際交流事業に重点的に取り組んでいる。
第1は、多様な国際交流ミッションの派遣である。中国との国際交流の拡大や戦略的国際物流の構築と展開を図るため、今年度は「中国・東北日本国際交流ミッション」や「中国東北・江南部国際物流調査団」を派遣する。
第2に、東北地域国際観光推進協議会を中心とした、外国人観光客誘致の活動である。来年、青森で行われる冬季アジア大会等の国際スポーツイベントを絶好の機会としてとらえ、東北の知名度向上と受け入れ体制の整備に向けた諸活動に取り組んでいる。

6.地域の連携と自立を支える基礎的社会資本の整備
  辻 兵吉 氏〔東経連副会長・辻兵会長〕

基礎的社会資本整備は、広域的な連携・交流により、地域の自立と発展を支えるとともに、活力ある経済社会の形成を進める上で不可欠であり、長期的な視点に立って計画的に整備を推進していく必要がある。
高速道路については、ネットワーク化されてこそ十分な効果が得られるものであり、地域の連携、経済活性化に資するためにも、特に日本海沿岸東北自動車道全線の早期完成が重要である。
また、新幹線については、本年12月に東北新幹線盛岡−八戸間が開業されるが、東北新幹線八戸−新青森間、北陸新幹線長野−富山間の早期開業も強く求められる。国際コンテナ、港湾、国際空港の役割も飛躍的に高まってきており、インランド・デポ等の整備、CIQ体制(税関、出入国管理、検疫)の充実強化をはじめ、国際化に一層対応した港湾・空港の整備促進や機能強化を進める必要がある。

II.日本経団連側発言要旨

日本経団連側からは、森下副会長より税制抜本改革の推進、西室副会長より地方分権改革をめぐる最近の状況、樋口副会長よりグローバル化時代に対応した教育基盤の整備、奥井副会長より今後の住宅政策に向けた取組み、前田企業人政治フォーラム会長代行より日本経団連の政治への取組みについてそれぞれ説明があった。

《担当:総務本部》

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