経済くりっぷ No.6 (2002年10月8日)

9月12日/住宅政策委員会(委員長 和田紀夫氏)

わが国における住宅政策の課題等について

−国土交通省の松野住宅局長と懇談


住宅建設は経済全般に大きな波及効果を有しており、経済活性化の切り札として期待されるとともに、豊かな国民生活の実現の観点からも住環境の整備がきわめて重要である。そこで、本年度新たに発足した住宅政策委員会では、9月12日に、国土交通省の松野仁住宅局長を招き、わが国における住宅政策の課題等について説明を受けるとともに、意見交換を行った。

I.松野局長説明要旨

1.住宅の現状

1968年以降、住宅総数は世帯数を上回り、住宅の絶対的不足は解消しているものの、今後は住宅の質の向上が課題である。人口は2006年、世帯数は2014年をピークに減少に転ずる一方、高齢者数は増加の一途をたどっている。世帯類型別に持家住宅の面積をみると、65歳以上の単身および夫婦の50%が100m2以上の広い住宅に住む一方で、4人以上家族の31%が100m2未満の住宅に住むなど、住宅と世帯のミスマッチが生じている。
また、わが国の住宅総数の約半数は、1981年の新耐震基準施行以前に建てられたものであり、老朽化が進んでいる。さらに、バリアフリー度も低く、2ヵ所以上の手すり、段差のない階段、車椅子の通れる廊下等を揃えた住宅は、住宅総数の2.7%しかない。
一方、わが国の住宅市場は、中古住宅販売件数、住宅投資に対する増改築の占める割合とも、欧米諸国に比べ非常に少なく、わが国の住宅市場は新築住宅に偏っている。

2.特殊法人改革

昨年末閣議決定された「特殊法人等整理合理化計画」において、都市基盤整備公団は廃止され、新たな独立行政法人に生まれ変わることとなった。公団事業については、

  1. 市街地整備改善事業は都市再生を図るものに限定、
  2. 新規の宅地分譲事業の廃止、
  3. 自ら土地を取得して行う賃貸住宅の新規建設の中止、
  4. 賃貸住宅の管理を可能な限り民間へ委託、
  5. 棟単位での賃貸住宅の売却、
等の措置をした上で、独立行政法人に引き継ぐことなった。また、平成15年度の施策として、
  1. 民間事業者が事業参画しやすい条件等の整備、
  2. 民間による賃貸住宅供給の支援業務の強化、
  3. 民間再開発支援、
等の推進の実施を図っていくこととしている。
一方、住宅金融公庫については、同じく「特殊法人等整理合理化計画」において、5年以内に廃止され、公庫が先行して行うこととしている証券化支援業務を行う新たな独立行政法人が設置されることとなった。融資業務については、段階的に縮小し、独立行政法人が設置される際、民間金融機関が円滑に業務を行っているかどうかを勘案し、融資業務の扱いを最終決定する。また、公庫の既往の債権については、当該独立行政法人に引き継ぐこととしている。
なお、証券化支援業務の創設に係る公庫法改正については、平成15年の通常国会に提出する予定である。

3.住宅税制

住宅関連税制については、住宅政策の一環として、財政、金融上の措置と並んで、住宅取得能力の向上、良質な住宅建設の促進等により、居住水準の向上を図ること等を目的として、取得、譲渡、保有などの場面に応じ、国税及び地方税の税目ごとに種々の軽減措置が講じられている。さらに、平成14年度の税制改正においては、マンション建替事業に係る特例措置の創設や住宅の耐震改修工事に係る特例措置の創設等の措置が講じられた。
平成15年度の住宅局税制改正要望は、

  1. 高齢者の資産の有効活用による住宅投資の活性化や、住宅取得者等の自己資金増による良質な住宅ストック形成、居住水準の向上を図ることを目的とした「住宅取得資金の贈与にかかる贈与税の特例措置の大幅な拡充」、
  2. 優良な賃貸住宅の供給促進を図るため、既存の建築ストックを有効に活用し、特に不足している都心部でのファミリー向け賃貸住宅や高齢者向けの賃貸住宅として再生・供給することを支援する「再生賃貸住宅促進税制の創設」
等、全部で11項目ある。

4.平成15年度主要施策

遊休化しているオフィスビル等の都心賃貸住宅等への再生の推進に向けて、

  1. 良質なファミリー向けの賃貸住宅への転換に係る改良費等への補助及び税制上の支援措置の創設、
  2. 住宅に係る採光に関する規定の合理化、
  3. ローコスト工法の技術開発、設計施工指針の作成普及、
等を実施する。
また、耐震改修にかかる補助及び税制については、平成14年度に措置された、「住宅の耐震改修工事に対する補助制度」と「住宅の耐震改修工事にかかる税制上の特例措置」に加え、平成15年度は、災害時に重要な機能を果たす医療施設、避難所等に対する補助の追加・拡充を実施する予定である。
さらには、燃料電池など新エネルギーの住宅への導入に必要な技術開発の推進を図っていく。

5.市場環境整備

住宅市場整備行動計画(アクションプログラム)の狙いは、住宅市場全体を動かしていくために、消費者が新築だけでなく既存住宅も含めて、安心して売買できる市場を作ることである。そこで、本年8月より、中古住宅についても住宅性能表示制度の対象に追加した。今後は、マンションの維持管理履歴情報の登録制度や価格査定システムについて整備していく必要がある。さらに、住宅リフォームの標準契約書や事業者情報提供システム、中古住宅の成約価格情報等の整備についても進めているところである。
また、新築住宅に係る瑕疵担保責任は全ての住宅に義務付けており、最低10年間基本構造の部分について瑕疵担保責任を負うこととしている。

II.日本経団連側発言要旨

  1. 中古住宅市場の活性化を図るため、中古住宅に係る情報開示のあり方を検討すべきである。
  2. 住宅金融公庫の廃止に伴う不安は大きい。証券化市場の育成や金利変動リスクへの対応策などが必要ではないか。
《担当:産業本部》

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