経済くりっぷ No.6 (2002年10月8日)

9月17日/国土・都市政策委員会(共同委員長 岩沙弘道氏)

都市再生について

−東京都の青山副知事と懇談


国際的な都市間競争のなかで、わが国においても都市の再生が急務である。本年6月に「都市再生特別措置法」が施行され、7月には「都市再生緊急整備地域」の第一次指定が行われたところであるが、今後は、これら緊急整備地域の地方自治体の運用等がより重要となる。そこで、国土・都市政策委員会では、東京都の青山副知事を招き、東京都における都市再生の取組みについて説明をきくとともに、意見交換を行った。なお当日は、土地・住宅分野の規制改革要望案についても審議を行った。

I.青山副知事説明要旨

1.環状メガロポリス構造の実現

東京都の都市政策は従来、「多心型都市構造」を基本に据え、丸の内を中心とした都心や新宿、池袋等の既存の副都心に加えて、大崎や錦糸町等の新しい副都心の形成を図るなど都市機能の分散化を図ってきた。しかしながら近年、成熟化社会・情報化社会の進展を踏まえ、首都圏中央連絡自動車道(圏央道)に囲まれた首都圏全体で集積のメリットを生かす「環状メガロポリス構造」の実現に政策の力点を置いている。
「環状メガロポリス構造」の実現にあたっては、

  1. 圏央道、東京外郭環状道路(外環道)、首都高速中央環状線の三つの環状道路の整備、
  2. 羽田空港の再拡張と国際化、
  3. 都市の活性化、
の3点を政策の柱に据えて取り組んでいる。

2.首都圏における三環状道路の整備

東京オリンピック後、日本列島改造論や数次にわたる全総計画のもと、全国の高速道路網が着々と整備されていくなかで、東京の道路整備は疎かにされてきた。その結果、東名高速道路や東北自動車道等の受皿として整備すべき外環道が整備されず、これによって首都高や環七・環八に多くの車が流入し、慢性的な渋滞を招いてきた。これからの5〜10年間に波及効果の高い首都圏に重点投資すべきであり、三つの環状道路、特に外環道の整備を急ぐべきである。現在、道路公団民営化の議論が行われているが、道路整備にあたっては公団の採算性のみならず、利便性向上や渋滞解消、環境改善等、広く経済社会への波及効果を考慮すべきである。また、首都高速道路公団と道路公団を同列に扱うべきではない。

3.首都圏における空港整備

わが国では首都圏空港の整備が遅れている。パリは、都心から22kmのところにシャルル・ド・ゴール空港を建設し、オルリー空港と合わせて6本の滑走路を持つ。ロンドンはヒースロー、ガトウィック空港など合計5本の滑走路を持つ。ニューヨークではJFK、ラガーディア、ニューアーク空港を合わせて滑走路は9本ある。わが国では現在、羽田と成田で5本の滑走路があるが、羽田空港にもう一本滑走路を整備し、横田基地の滑走路も含めると、滑走路は7本になる。1兆円近くの費用がかかっても、羽田空港に滑走路をもう1本整備すべきである。「羽田空港の再拡張と国際化」は都市再生プロジェクトに位置付けられたが、工法が決まっていない。早急に決定し、早期に整備すべきである。

4.都市の活性化

東京都環境影響評価条例を約20年ぶりに大改正した。特定地域の高層建築物について、現行約20カ月要するアセス手続きの期間を改正後には約9カ月以内に短縮化するとともに、アセスの対象となる規模要件を緩和した。
都市再生特別措置法が本年6月から施行されたことに伴い、東京都では、「民間の力を活かした首都の顔づくり」を掲げて、都市再生緊急整備地域として7地域を提案し、7月24日に第一次指定を受けた。これらの地域には、南青山一丁目団地建替プロジェクトなど、今後、他地域にも波及効果をもたらす先駆的な事例が含まれている。

5.住宅問題

上記のほか残された重要課題として住宅問題がある。現在、東京都では敷地の細分化が急速に進行しており、100m2未満の小規模が半分近くを占める。東京都では、小規模宅地を統合し段階的に建替えを促進する「街区再編プログラム」を推進している。
また、わが国では、ニューヨークやパリに比べて、都心の借家比率が低く、借家の流動性を妨げている。2割が最低居住水準未満であるなど借家の居住面積も狭い。わが国では、戦後「持ち家政策」の下、持ち家に対してのみ税制措置を講じてきた。今後とも「持ち家政策」を基本としつつ、借家政策をどう講じていくかが課題である。働く意欲や社会全体の健全性を確保する観点からも、30〜40代に何らかの税制措置を講じていくべきである。
さらに、都市計画道路の半分が未整備なこともあって、区部では付与した容積率が十分に使われていないことも問題である。
最後に、フランクリン・ルーズベルトのニューディール政策では、1932年と1940年の実績を比べると、約2倍の政府歳出を行い、国債残高も2倍に膨らんだが、名目GDPも約2倍、民間雇用も約1.5倍に増え、結果的に政府歳入も約3.4倍に増えた。今こそ、税収増のための政府支出を国家として必要な公共事業に対して重点的に投入していくことが重要である。

II.日本経団連側発言要旨

  1. 容積率を上げることが都市再生に必要不可欠であることを国民に正面から理解してもらう努力が必要ではないか。

  2. 地方財政制度のあり方についても考え直す必要があるのではないか。

《担当:産業本部》

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