経済くりっぷ No.6 (2002年10月8日)

9月13日/総合政策委員会企画部会(部会長 神尾 隆氏)

日本社会の変容と今後の課題について


総合政策委員会企画部会第4回会合を開催し、ジャーナリストの嶌信彦氏より、「日本社会の変容と今後の課題」と題して説明を受けるとともに、意見交換した。

○ 嶌氏説明要旨

1.女性と感性の時代へ

1980年代に入り、一般家庭にテレビや自動車等の耐久消費財が揃って生活にゆとりが生じると、時代は「モノ」から「生活」を中心とするようになった。しかし、バブルの発生により、国民の関心がより良い「モノ」を買う方に戻されたが、バブルが崩壊し、今度は一挙に節約に走った。
今や家庭では主婦が財布の紐を握り、家や車を買う時は必ず女性の意向が通る時代である。旅行者も、その大半は女性が占める。また、政治家の人気も女性の支持で左右される。つまり経済や政治の実態は女性が握っている。こうした女性たちは今、モノではなく、居心地の良いライフスタイル、すなわち、やすらぎ、安全、安心、清潔、健康、環境、医療・介護、教育、コミュニティ、ショッピング、自然、文化等を求めている。

2.国際社会の変容

国際社会については、冷戦構造が崩壊し、グローバリゼーションが進展していく中で、これまでのシステムや慣行が崩れた。しかし、外交、環境、戦争、科学、倫理等を規制する国際的なルールはまだ作られておらず、カオスの状態にある。こうした中で、日本が時価会計などアメリカン・スタンダードに従っていては、いつまでも不良債権処理や構造改革は進まない。ルールを変えるという発想を持つ必要がある。

3.日本経団連への期待と提言

  1. 1980年代以降、企業の価値観が多様化し、経済団体として一つの価値観で利害を調整することが困難になり、存在感が薄れた。財界には、これまで「民主主義、自由主義、資本主義を守る」という大義名分があったが、世界が大きく変化する中で、財界にとっての新たな大義名分は何かということが問われている。その場合、リーダーや経済団体が日本を変える「ミッション」と、それを行うための「パッション」とプレゼンテーション力としての「ファッション」を国民に示す必要がある。また経済界が政界再編のイニシアティブをとるという気構えを持つべきである。政治献金を行うなら、環境、構造改革等の社会のニーズにあった政策課題を評価した上で、その賛成者に資金を提供してはどうか。

  2. さらに、国のマクロ政策に期待するのではなく、地域や企業の取組みをモデルとして全国に広めていく。

  3. 日本経団連も、日本を変えるという意志を持つとともに、社会の感性を身につけることが必要である。イラク問題など重大な時期にはメッセージを発信すべきである。

《担当:社会本部》

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