9月26日/教育問題委員会(共同委員長 樋口公啓氏、浜田広氏)
教育問題委員会では、中央教育審議会の鳥居泰彦会長を招き、現在同審議会で行われている教育基本法改正をめぐる議論の模様などについて説明をきくとともに、意見交換を行った。また、併せて、教育分野における規制改革要望や今後の委員会活動のあり方などについて審議した。
現代のわが国の教育をめぐる問題は、戦後57年の民主化と発展の中で、社会が急激に変化したことに起因する。経済的に豊かになった結果、今の豊かさを当然視し、危機感のない若者が増えた。また、礼節規律を無視し、異常行為を「個性」と主張する者が増えている。先人の努力と遺産への尊敬の念や、努力と創意工夫の上に成功があるということを教えるとともに、行為規範の座標軸を示す教育を行う必要がある。
かつてイギリスも、現在わが国が直面している教育問題を経験した。同国では、サッチャーが1980年に教育改革を断行するまで、地域の教育委員会への過度の権限委譲、左翼的な教職員組合、国家批判的かつ自虐的な歴史教育等の問題を抱えていた。しかも、「トピック学習」と呼ばれる系統立たないカリキュラムを導入したことなどから、基礎的な学力が低下し、学校の規律も低下していた。
サッチャー政権は、1980年に、
教育基本法改正に反対する意見もあるが、「少なくとも『朕は』で始まる制定文ぐらいはずさせて欲しい」と言っている。制定文を削除できる程度の抜本的な法改正を行うか、あるいは現行法の部分修正に留めるか、まだ方針が定まっていない。
教育基本法を持つ国は多い。参考になる規定を挙げると、フランスの教育基本法(ジョスパン法)の中では、義務教育終了段階で一定の職業能力を身につけることを権利として明記している。また、一生涯にわたり教育を受ける権利があることも規定されている。韓国の基本法においても、「学習権」として、「国民は、生涯にわたり学習する権利を有する」としている。「学生は、学校の規則を遵守しなければならない」とした規定もある。わが国では、義務教育段階で、将来の職業選択の道筋をつける教育が行われていないし、タブー視する向きもある。また、学生の義務について規定することは難しいのが現状である。
中央教育審議会としては、年内あるいは年明けにも、教育基本法改正要綱を取りまとめる予定である。