経済くりっぷ No.7 (2002年10月22日)

10月4日/環境安全委員会(共同委員長 山本一元氏)

ビジネスと環境は両立可能

−英国の温暖化対策についてアーサー外務次官よりきく


英国は、気候変動税や国内排出権取引をいち早く導入するなど、温暖化対策で注目を集めている。そこで、来日したアーサー経済担当外務次官より、温暖化問題に対する考え方や取組みについて説明をきいた。アーサー次官は、英国の環境政策は市場メカニズムを基本としており、環境問題への取組みはビジネスにとってもプラスに働くことを強調した。

○ アーサー次官説明要旨

1.基本は市場メカニズム

1970年代に比べると、この15年で英国の環境問題は大きく改善された。ブレア首相は環境保護と産業部門の競争力強化は両立し得ると考えている。
英国の環境政策は市場メカニズムを基本としている。たとえば石炭補助金の廃止により、より安価で環境に優しい天然ガスや再生可能エネルギーの導入を促進する。企業にとっても、環境イメージが市場において重要になりつつある。シェルが廃油を海に廃棄しようとして不買運動に遭ったのは良い例である。逆にトヨタやホンダはハイブリッド車や燃料電池の開発で有名である。すでに低公害車の市場は急速に拡大しつつある。環境問題に取り組まない企業はリスクを冒すこととなる。

2.京都議定書の目標をオーバー達成へ

京都議定書ではEU全体で7%削減を約束しているが、その内訳として英国は12.5%の排出削減を割り当てられている。しかし現在の政府は23%削減を目指す政策の導入を考えている。最大の排出国である米国の議定書からの離脱による、英国の経済への悪影響を懸念する声もある。しかしそうならないようにするためにも、環境保護の取組みが経済にとってもプラスになるようにしていく。

3.キャップ&トレードの排出量取引

温暖化対策を進めるために、英国政府は昨年、気候変動税を導入したが、産業界に不評だったため、本年4月より新たな排出削減策として国内排出権取引を導入した。政府との間で排出削減目標に合意し排出権取引に参加する企業は、気候変動税を80%免除される。
英国の排出量取引はキャップ&トレードである。キャップがなくては、取引はあり得ない。現在、取引への参加は自主的であるが、2006年からは義務化される。
英国の排出量取引には電力業界は含まれていない。代わりに、再生可能エネルギー証書の取引が導入されている。

4.日英グリーン同盟

ヨハネスブルグ・サミットの目標は、環境と開発の適切なバランスを取ることであった。日本と英国は、再生可能エネルギーの推進、途上国における搾取の防止、持続可能な環境の振興などでパートナーシップを進めている。100年前の日英同盟のように、今度は日英グリーン同盟を結ぶことが重要である。

《担当:環境・技術本部》

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