経済くりっぷ No.7 (2002年10月22日)

10月3日/海洋開発推進委員会(委員長 武井俊文氏)

21世紀初頭におけるわが国の海洋政策


文部科学省科学技術・学術審議会は、本年8月、今後の中長期的な海洋政策に関する答申「長期的展望に立つ海洋開発の基本的構想及び推進方策について」を取りまとめた。そこで、文部科学省研究開発局海洋地球課の吉田大輔課長より、21世紀初頭におけるわが国の海洋政策などについて説明をきくとともに、懇談した。

○ 吉田課長説明要旨

1.わが国における海洋政策のあり方

国連海洋法条約の締結や環境問題の関心の高まり等、海洋政策を取り巻く状況の変化を踏まえ、持続可能な海洋利用の実現に向けた海洋政策への転換を図ることが重要である。
今後10年程度を見据えて、わが国の海洋政策は、「海洋を守る」「海洋を利用する」「海洋を知る」のバランスのとれた政策に転換を図るとともに、総合的な視点に立ち、関係府省ならびに国際的にも連携しながら諸施策を実施することが重要である。

2.海洋政策の推進方策

(1) 海洋保全
海洋環境の維持・回復に向け、閉鎖性海域の環境改善事業の推進や、有害化学物質等が生態系や人の健康に及ぼす影響の解明等を図る。海洋利用・沿岸防災等に関しては、海岸侵食・砂浜等の消失防止への取組み、地球温暖化に伴う海面上昇や資源開発等による環境影響評価等の取組みを進める。

(2) 海洋利用
水産資源の管理・回復等の海洋生物利用や、風力、波力や海洋深層水等の再生可能な海洋エネルギー・資源利用、石油・天然ガス、マンガン、メタンハイドレート等の海洋鉱物・エネルギー資源利用、長距離幹線輸送の内航海運への転換や海賊対策等の安全で効率的な海上輸送の推進などを図る。

(3) 海洋研究
国際統合海底掘削計画によるマントルも視野に入れた調査、地球シミュレータを用いた地球温暖化等の変動予測、将来の海洋変動に伴う生物生産の予測等を推進する。

(4) 海洋政策全体の基盤整備
海洋に関する人材の育成・理解増進、海洋データの収集、管理、提供の推進、国際的問題への対応、総合的な海洋政策の推進を図る。今後の海洋政策の総合的推進にあたっては、当面は、科学技術・学術審議会海洋開発分科会を活用するが、政府の海洋政策に関する体制のあり方について、議論を重ねることが重要である。

3.平成15年度海洋開発関連経費概算要求

平成15年度の海洋科学技術関連は、本年度比18.9%増の1,031億円、海洋開発事業関係では本年度比15.3%増の8,057億円の要求を行なっている。文部科学省の科学技術関連では、地球深部探査船「ちきゅう」の建造、地球シミュレータの運用等が重点事項となっている。

《担当:環境・技術本部》

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