10月23日/住宅政策委員会企画部会(部会長 立花貞司氏)
本年度発足した住宅政策委員会では、住宅政策に係る総合的な提言を取りまとめることとし、同企画部会において、その具体的な検討を行う。その第1回会合として、昨年末の特殊法人等整理合理化計画において、住宅金融公庫は5年以内に廃止され、証券化支援業務を行う新たな独立行政法人が設置されることとなったことを踏まえ、住宅金融公庫の吉井一弥理事を招き、住宅金融の今後の展開ならびに欧米の住宅政策について説明をきくとともに、意見交換を行った。
住宅金融公庫は、住宅の建設・購入に対する長期・固定資金の貸付を通じて、国民の自助努力による住宅取得を支援するとともに、良質な住宅ストックの形成を誘導しつつ居住水準の向上を図ってきた。これまでに、戦後建設された住戸の約3割にあたる1,890万戸への融資を行い、2001年度末の貸付金残高は72.6兆円にのぼる。
公庫の役割として、具体的には、第1に、金融動向にかかわらず、長期固定資金を供給してきた。第2に、返済負担率など客観的な審査のみを行い、職業、肩書き等で選別されることのない公平な融資を実施してきた。第3に、建設基準の設定、設計審査、現場審査を実施し、住宅の質の向上を誘導してきた。その結果、阪神・淡路大震災でも、公庫融資住宅は一般の木造住宅に比べて大破した住宅が少なかった。また、1996年より、バリアフリー、省エネ等の質向上を誘導する金利体系に再編し、その普及に貢献してきた。その他、過去10年間で12回の経済対策への対応により住宅投資を下支えしたほか、返済困難者等に対するきめ細やかな対応を行うなど、政策金融機関としての役割を果たしてきた。
しかしながら、2001年末の特殊法人等整理合理化計画を踏まえ、現在、民間住宅ローン債権の証券化支援事業の創設や、業務のスリム化・重点化等を積極的に推進している。既に2002年度において、事業計画戸数の縮減や融資限度割合の見直し、特別加算額の縮減などの実施により、事業費の4分の1を削減することとしている。
今後の住宅金融のあり方について、「市場機能を積極的に活用した住宅金融のあり方懇談会」や「自民党政務調査会住宅土地調査会住宅金融小委員会」の報告でも示されたように、住宅は年収の数倍の高価な買い物であることから、国民の長期にわたる生涯設計に十分応える「安心」できる金融システムが必要である。また、住宅の質や居住水準の向上はもとより、密集市街地等の再生や災害等への対応といった、政策目標への対応も住宅金融として欠かせない役割である。
長期・固定金利の住宅ローンを民間金融機関等が提供することを可能とするため、公庫は、公的機関の信用力を活用して証券化を行う、証券化支援業務を創設する。均一銘柄の証券を計画的・安定的・継続的に発行する必要から、まずは「買取型」の証券化支援業務を「保証型」に先行して平成15年度に実施し、保証型については平成16年度以降に実施する。なお、この法案は次期通常国会に提出予定である。
買取型の証券化支援事業は、
今後の住宅政策のあり方を検討するにあたっては、諸外国の住宅政策を参考にすることも重要である。欧米諸国の住宅政策は、国によって特色があるが、住宅取得促進税制や公的機関による住宅ローン保険・保証、各種融資制度や補助などが充実しており、歳出総額に占める住宅予算や住宅関係減税額の割合も、わが国に比べてかなり大きい。
証券化が進んでいる米国では、住宅ローン利子所得控除制度が導入されている。わが国でも税制上の措置を検討すべきである。
証券化市場の育成のためには、公庫と民間金融機関の協力が不可欠である。