10月16日/アメリカ委員会
アメリカ委員会では、経営および人材戦略分野におけるコンサルタント会社として世界的に知られるスペンサースチュアート社のデイトン・オグデン共同会長の来日を機に同氏を招き、最近の米国コーポレート・ガバナンスの動向に関する講演会を開催した。
1年半前、日本企業のリーダーの前で、米国のコーポレート・ガバナンスは米国企業に極めて良い影響を与えていると誇りを持って話した。そして、控えめにではあるが、日本企業も米国のシステムを採用するべきではないかと提案した。
しかし、そのわずか9ヵ月後にエンロンが破綻し、その後も大企業の不正会計事件が相次いで発覚した。米国のコーポレート・ガバナンスが、この種のスキャンダルを回避できず、米国経済にこれほど甚大な影響を及ぼすとは想像もできなかった。
米国のコーポレート・ガバナンスは、大きな転換期を迎えており、改革が急速に進んでいる。これまで以上に取締役会の独立性が重視され、社外取締役の定義が明確に定められた。また、監査、報酬、指名の3つの委員会の機能も強化されている。
S&P500(スタンダード&プアーズ500種株価指数対象銘柄)の平均では、米国では社外取締役が取締役全体の8割を占める。ちなみに、英国では6割が社内取締役である。
社外取締役の平均年収は11万5,000ドルであるが、職務に要する時間と責任に比して、これだけの報酬で割が合うのかとの議論もあり、今後も上昇を続けるだろう。また最近は、社外取締役の供給が需要に追いつかない状態であり、意欲的で有能な人材をいかにして確保するかも重要な課題となっている。
コーポレート・ガバナンスは、エグゼクティブの行動の自由を制限するものではない。また、環境の変化を反映し、フレキシブルでなくてはならない。余りにも多くの規則により硬直的になれば、俊敏な対応ができず、変化に対処できないだろう。