経済くりっぷ No.9 (2002年11月26日)

10月30日/アメリカ委員会

米国の景気回復は緩やかに進む

−ウッドワースホルディングス社ウッドワース社長よりきく


アメリカ委員会では、ニューヨーク市の経済アドバイザーを務めるウッドワースホルディングス社のジェイ・ウッドワース社長を招き、米国経済の動向や今後の見通しなどについて話をきくとともに、懇談した。

○ ウッドワース氏説明要旨

1.米国経済の現状

2002年7〜9月期の実質GDP成長率は4〜6月期の1.3%成長より高まると考えられる。しかしながら、全般的に景気回復のペースは鈍く、10〜12月期の成長率は鈍化する公算が高い。
2002年の経済成長の大半は個人消費が支えてきたが、消費者信頼感指数は低下を続けており、これ以上の大幅な拡大は期待できない。チェーンストア売上高の伸びも鈍化しており、これまでゼロ金利等のキャンペーンにより好調であった自動車販売も9月に入りやや減速してきている。他方、長期金利やモーゲージ金利の低下により、住宅投資は堅調に推移している。
昨年の景気後退は在庫調整に起因するものであった。2002年年初に調整は一段落したが、「米国経済の回復力は強い」との大半のエコノミストの意見をふまえ、企業は再度生産を急激に増加させた。その後この予測は誤りであったことが認識され、企業は生産を減少させたが、この結果、現在は再び在庫が生じている。
株式市場では、1980年代には15倍程度であったPER(株価収益率)が、1990年代後半に30倍に達し、2001年には46倍を記録した。株価は過去30ヵ月間で大幅に下落したものの、企業利益もまた大幅に下落したため、結果として現在でも高水準で留まっている。
通常、米国の景気回復期は、まず個人消費が牽引し、6ヵ月遅れて企業の設備投資が拡大するというプロセスを辿る。しかしながら、現時点では、前述したように個人消費の大幅な上昇は見込めず、また、景気の先行きに懸念が残ることから、経営者も新規投資には依然慎重な姿勢を見せている。総じて、景気回復は緩やかなペースに留まるといえよう。
なお、仮にブッシュ政権がイラク攻撃を実施すれば、1991年の湾岸戦争時のように米国経済にマイナスの影響が生じることも十分に考えられる。

2.来年の米国経済予測

米国経済は、2003年後半から本格的な回復に向かうと考えられる。2003年の実質GDP成長率は2.2%と予想され、株価は来年春までには若干上昇するであろう。FF金利は年内に引き下げられた後、2003年末まで利上げは行われず、また、長期金利は2003年春までは4%程度で推移し、年末までには5%に上昇すると思われる。為替については、ドルは円に対して若干強含むことが予想され、2003年末までには130円台に達するであろう。

《担当:国際経済本部》

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