11月5日/輸送委員会(共同委員長 三浦昭氏、岡部正彦氏)
昨年末閣議決定された「特殊法人等整理合理化計画」に基づき、現在、「道路関係四公団民営化推進委員会」および「交通政策審議会航空分科会」において、それぞれ道路4公団民営化ならびに国際拠点空港の民営化に関し、年末の最終取りまとめに向けた審議が本格化している。そこで、東京大学の岡野行秀名誉教授ならびに野村総合研究所の宮前直幸主任コンサルタントを招き、それぞれ「全国高速道路網のあり方」、「国際拠点空港の民営化に向けた展望」につき説明を伺うとともに、意見交換を行った。併せて、当日は日本経団連の「高速道路整備および道路関係四公団民営化に関する意見(案)」と「今後の空港整備と国際拠点空港の民営化問題について(案)」について審議を行った(提言は11月19日に公表。詳細は4頁、6頁を参照)。
道路は、交通基礎施設としてのみならず、上下水道や電気通信などのライフラインを収容する空間、防災空間、また、防衛等有事の際の緊急活動を可能ならしめる空間としての特性を有している。高速道路は、高速走行可能で高質な地域間幹線道路として、一般道路と相互に補完・代替的な関係を保ちながらネットワークを構成しており、国民生活に不可欠なインフラである。
高規格幹線道路網(14,000km)構想は、国の国土政策によって決定されるべき問題であり、既定の整備計画路線である9,342kmは国の責任において建設すべきであると考える。ただし、公団の経営状況に鑑み、道路の仕様や建設手法については柔軟性を持たせる必要がある。個人的には、高規格幹線自動車専用道路などにおいて、無料ではなく安い料金が課されても良いのではないかと思う。
道路公団の民営化に関して、現在の公団を「第二の国鉄」に擬え、あたかも経営破綻を来たしているかのような議論がされている。しかし、旧国鉄と日本道路公団の共通点は、
特殊法人を民営化すれば、経営効率化によって料金の引下げが実現すると考えられているが、民間企業のメカニズムをそのまま適用できるか疑問である。地域的に独占事業となる高速道路サービスにおいては、市場の失敗があり得るため、公共部門が直接運営するか、あるいは民間企業の場合には公的な独占規制を導入しなければならない。高速道路の経営効率化が目的であれば、公団経営に係る規制を緩和し、適切なインセンティブを付与することで対応できるのではないか。
成田空港が、本年4月より暫定平行滑走路の供用を開始した。これに伴い、従来関空に張られていた定期便が成田にシフトし、その発着回数が対前年同月比36%以上も伸びている一方、関空では18%も落ち込んでいる。また、
成田空港においては、平行滑走路供用に伴う収入増加によって、2002年度の利益は大幅に増加する見込みである。600億円の営業キャッシュフローを計上する一方、有利子負債残高は5,630億円まで減少し、有利子負債/営業キャッシュフローの比は9.4倍まで縮減される。対照的に、関空においては約1兆円もの有利子負債の利子負担が経営を圧迫しているのに加えて、航空需要減少によって赤字が倍増(2001年度:▲170億円⇒2002年度:▲330億円)し、営業キャッシュフローはゼロと試算される。これでは民営化は到底不可能である。
企業の投資価値を測る上で一般的な手法であるディスカウント・キャッシュ・フロー(DCF)法を用いて両空港の株式価値を試算した。この結果、成田が現在割高な空港使用料、旅客使用料を30%低減した場合、成田空港の株式価値は6,600〜8,100億円になるものと想定される一方で、関空は巨額の有利子負債に苦しみ、5,500億円のマイナス価値となる。
関空がプラスの株式価値を付け、長期的に完全民営化が可能となる一つのケースは、