経済くりっぷ No.9 (2002年11月26日)

10月28〜29日/日本ロシア経済委員会(委員長 安西邦夫氏)

戦略的パートナーとして日ロ経済交流の一層の促進に向けた方策について

−第6回日本ロシア経済合同会議を開催


日本ロシア経済委員会では、ロシア日本経済委員会(委員長:ヴォリスキー ロシア産業家企業家連盟(RSPP)会長)との間で、10月28日と29日の両日、第6回合同会議を東京にて開催した。日本側からは安西委員長(団長)、安崎副委員長、辻副委員長はじめ約150名、ロシア側からはユルゲンス ロ日経済委員会第一副委員長(団長)はじめ約50名が参加し、ロシアのWTO加盟に向けた制度改革の現状と課題や、今後の日ロ産業協力のあり方等について活発な意見交換が行われた。以下はその概要である。

第6回日本ロシア経済合同会議

I.開 会

  1. 安西・ユルゲンス両団長は、2001年の対ロシア政府派遣経済使節団が、両国間の経済関係の活性化に向けた大きな転換点となったことを強調するとともに、使節団訪ロ以降のロシアにおける政治経済情勢の安定や経済改革の進展を評価した。その上で、こうした状況変化をうけ、双方企業によるビジネスへの関心が高まってきていることや、科学技術や観光といった新分野における協力の可能性が大きいことを指摘した。そして、今次合同会議が、双方が戦略的パートナーとしての認識を高める重要な役割を担うものと位置づけた。

  2. 小泉首相ならびにカシアーノフ首相のメッセージでは、両国関係が改善の方向にある中で、貿易経済関係も拡大の気運が高まっていることを指摘した上で、こうした状況の中で開催される今次合同会議がもたらす成果への期待が強調された。

  3. また、安西団長の挨拶および小泉首相のメッセージにおいて、モスクワにおける劇場占拠事件の犠牲者に対し、深い哀悼の意が表明された。

II.各セッションの模様

  1. 第1セッションでは、日ロ両国企業のグローバル戦略と日ロビジネスの位置づけが紹介され、それをもとに、両国の企業間交流の進め方について意見が交わされた。

  2. 第2、第3セッションでは、参加企業・機関の代表から、日ロ産業協力の現状と課題が報告されるとともに、現在政府間で検討が進められている日ロ貿易投資促進機構の設立や、わが国制度金融の活用など、今後の交流拡大に向けた具体的施策についての考え方が示された。

  3. 第4セッションは、極東ザバイカル地域長期発展プログラムに焦点を当て、ロシア極東地域における日ロ協力の展望と課題が議論された。

  4. 第5セッションでは、ロシア側から長期エネルギー戦略の概要が紹介されるとともに、北東アジア地域における日ロ・エネルギー協力の方向性や地球環境問題への取組みが議論された。

  5. 第6セッションは2つのグループに分かれ、バイオやナノテクなどの先端分野における科学技術交流の促進策、ならびに、観光協力の推進上の課題について意見交換した。

  6. 第7セッションでは、ロシアのWTO加盟に向けた制度改革の現状と課題について議論が行われた。双方参加者から、これまで日ロ間の経済交流を阻害しているいくつかの要因が解決もしくは解決に向かっていることが評価されるとともに、両国経済交流の促進に向けて、引き続き、法税制の運用・執行の確保などのビジネス環境の整備を図る必要性が強調された。

III.閉 会

安西・ユルゲンス両団長は、ロシアの制度改革の進展および両国間の企業協力が着実に進展していることを改めて確認するとともに、以下を最優先課題として、両国政府とも協力しつつ、その解決、実現に努めることとした。

  1. ロシア側では、ビジネス関連諸制度について、国際的な整合性を図りつつ、その整備と運用の早期改善に努めるとともに、司法改革を推進する。その一環として、ロシアのWTO早期加盟に向け双方経済界が協力して、企業が直面する問題を調査するとともに、両国政府に対して改善を働きかける。また、国家保証にかわる制度的枠組の構築を模索する。

  2. 日本側では、投融資条件の改善、国家保証の条件緩和、マーケット・企業情報の提供など、ビジネス交流促進のための制度的枠組の改善・構築を推進する。その際、ロシア極東地域との関係の強化、中小規模ビジネスの拡大についても十分留意する。

  3. 日ロ貿易投資促進機構については、日ロ双方の官民が協力して早期設立を図る。ロシア側では、貿易投資諸手続の窓口の一本化に取り組む。

  4. 北東アジアのエネルギー安全保障ならびに地球環境問題への対応の観点から両国エネルギー協力を推進する。

  5. 観光協力の促進に向け、双方で推進体制を整備するとともに、これまで指摘されてきた諸課題の解決に努める。

  6. 科学技術協力の促進に向け、両国産学官の協力により双方の推進体制を強化するとともに、具体的な協力事例の増加を促す。

  7. 対日ビジネスに関心のあるロシア企業の発掘および双方企業の交流を、双方が協力して進める。その効果的な実施のため、ロシア産業家企業家連盟の中に、日本担当の専門組織を設置することを検討するとともに、日本側は、モスクワに連絡窓口となる協力機関の設置を検討する。

  8. 上記の課題および今次合同会議の成果を踏まえ、日ロ経済交流の促進に資する具体的な方策が、現在両国政府で検討が進められている「日ロ行動計画」に反映されるよう、双方委員会が協力して両国政府に働きかける。

《担当:国際協力本部》

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