経済くりっぷ No.10 (2002年12月10日)

11月19日/総合政策委員会(委員長 奥田 碩 会長)

「21世紀日本の姿と国家理念」について


総合政策委員会を開催し、文化庁の河合隼雄長官より、「21世紀日本の姿と国家理念」と題して説明を受けた。また、年内を目途に公表する予定の「新ビジョン」についても意見交換を行った。

I.河合長官説明要旨

1.「中空均衡型」でバランスしてきた日本

世界全体がダイナミックに動いている中で、これまで日本は、絶対的なものをつくらず、それを空にしてバランスを保ってきた。これを「中空均衡型」と呼び、天皇制はその象徴である。一方、キリスト教文化圏は、唯一の存在である神を原理とする「中心統合型」でうまくいっていた。

2.「家」意識の強い日本人

「家」を大事にする日本人は、養子縁組を盛んに行い、家を絶やさないようにしてきた。ところが、明治維新というお家の一大事が起こったので、家や身分よりも、能力あるものを優先するという考え方が取り入れられた。しかし、それまでの日本を支えてきた「中空均衡型」の平等主義も根強く残り、第二次世界大戦後は、会社がそれまでの家代わりとなって、お家(会社)のために皆一生懸命働いた。

3.個人主義と利己主義の区別

ヨーロッパにおいても、近代になるまで、個人主義という考え方は存在せず、唯一の存在である神の思し召しが絶対であるとされてきた。その後、神の子イエス・キリストの誕生により、人間の存在を確立し、個人主義が浸透していくこととなった。このように、ヨーロッパでは、キリスト教倫理を背景に、個人主義が台頭してきたので、利己主義に走る心配はしていなかった。
しかし最近では、個人主義が行き過ぎたかたちで現れ、キリスト教から離れる若者が増えたことにより、倫理観が薄れつつあるという。一方、無宗教である日本人の倫理観は、生活の中から自然と涵養されている。「勿体無い」「嘘も方便」「一生不生」などの言葉は、仏教の教えに由来しており、「皆どこかでつながっている」ことを教えられている。
日本においても、個人を大切にすることは重要であるが、欧米の個人主義を真似するだけではなく、日本の良さを失わないかたちで、個人を活かす道を考えていくべきである。
また、こうした日本の良さは、海外に行くことで改めて実感するものである。日本は、海外からの留学生を受け入れるだけでなく、日本人を積極的に海外に留学させ、国家意識を体感させることも重要である。

II.「新ビジョン(案)」について

日本経団連は、「活力と魅力溢れる日本」を目指して、「新ビジョン」を策定することとし、年内を目途に公表することとした。

《担当:社会本部》

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