経済くりっぷ No.10 (2002年12月10日)

11月7日/第29回北陸地方経済懇談会

豊かな日本の創造と北陸地域の発展に向けて


日本経団連・北陸経済連合会(北経連)共催の標記懇談会が金沢市において開催された。日本経団連側からは、奥田会長、奥井・片田・西室・柴田の各副会長、高原評議員会副議長、前田企業人政治フォーラム会長代行が出席し、地元経済人約130名の参加のもと、活発な意見交換が行われた。また、懇談会に先立ち、日本経団連側は高松機械工業を訪問し、最先端のコンピュータ数値制御式旋盤等の製造工場を視察した。

I.北経連側発言要旨

1.開会挨拶
  山田 圭藏氏〔北経連会長・北陸電力会長〕

北陸地域の経済情勢は、個人消費が力強さに欠け、雇用情勢も厳しいなど、一段と厳しい状況にある。北経連が会員企業に対して9月上旬に実施したアンケートでも、大多数が現在の景気の基調を「底ばい」もしくは「下降」と回答している。また、約7割が景気の回復時期を15年下期以降と回答しており、先行きに対して大変厳しい見方をしている。政府には、デフレ対策の強化と相まって、地方の経済活性化に資する2002年度補正予算の早期成立を要望していく。
このような状況のもと、北経連では、本年1月に、「社会資本整備」と「21世紀にふさわしい魅力ある地域づくり」を柱とした「中期アクションプラン」を策定し、産業の活性化や広域連携の推進、環日本海交流の促進を積極的に進めている。

2.社会基盤の整備促進
  宮 太郎氏〔北経連副会長・大和相談役〕

北陸における鉄道、道路等の社会資本整備は、環日本海交流ゲートウェイとして、人・物流、広域観光、地域間連携の面から必要不可欠であるが、その整備は大変遅れている。特に長年の悲願である北陸新幹線については、昭和48年の整備計画発表以来、実に30年余りにわたって一日も早い全線開通を要望しているにもかかわらず、まだ半分も進んでいない。
今後の社会基盤整備の促進にあたって、関係者の議論がかみ合っておらず、国は、地方の理解できる形で、社会基盤の整備を進めていくことが求められる。

3.北陸地域の活性化と広域連携の推進
  江守 幹男氏〔北経連副会長・日華化学会長〕

個人の新しい発想をつなぐヒューマン・ネットワーク群の構築を目指す、北陸スーパー・テクノ・コンソーシアム(STC)事業は2年目を迎え、登録会員数も350名を超えた。設立以来、北陸3県において、情報交換の場として「北陸STCサロン」を6回開催するなど、共同研究や事業化に向けた支援に積極的に取り組んでいる。今年度設立された「北陸ものづくり創生協議会」も活用し、産学官の連携をさらに強化し、新産業、新技術の創出を図っていく。
また、北陸3県の広域連携の推進の一環として、広域観光振興に取り組むこととし、NHK大河ドラマ「利家とまつ」を起爆剤とした広域観光キャンペーンを集中的に行い、成果をあげている。さらには、21世紀にふさわしい魅力ある地域づくりの観点から、本年5月に「北陸広域観光振興策〜北陸広域観光へ〜」および「北陸広域観光モデルコース55」を策定した。今後は、このプランを基に具体的なアクションを展開していく。

4.環日本海経済交流の推進に向けた取組み
  南 義弘氏〔北経連常任理事・トナミ運輸社長〕

北経連では、北陸環日本海経済交流促進協議会(北陸AJEC)が主体となって、著しい成長を遂げる中国や緊張緩和が進む朝鮮半島など、対岸諸国の状況変化に対応しながら、環日本海経済交流の発展に向けた諸活動を展開している。
本年4月には、「第3回北陸・韓国経済交流会議」を開催し、官民合同会議のほか、経済投資セミナー、企業プレゼンテーションなど多彩な行事を実施した。同会議において、約30件に及ぶ商談が繰り広げられ、また前回の会議を契機として、北陸と韓国の企業同士の業務提携が成立した報告が行われるなど、環日本海交流の「実」は着々とあがっている。

5.フロア発言(要旨)

自由討議において、以下の意見が出された。

  1. 不良債権処理加速に伴う雇用や企業経営への影響が懸念され、地方に力点を置いた雇用等のセーフティネットの整備拡充が必要である。
  2. 構造改革特区の推進は地域活性化の観点からも重要な課題であり、規制緩和に留まることなく設備投資減税など各種施策を講ずるべきである。
  3. 新技術・新産業を創出し、技術立国を目指していく上で、科学教育の充実と人材の育成が大切である。
  4. 地方分権を進める上で、国と地方の役割分担と、地方への税源移譲を明確にすることが重要である。
  5. 地域の個性ある発展の観点から地方に重要な社会基盤の整備を政府・与党に働きかけて欲しい。
  6. 良質な住環境の整備は重要な政策課題であり、住宅取得を促進する税制のあり方など、今後の住宅政策の検討が必要である。
  7. 北陸にとって観光は一大産業であり、広域観光振興の観点からも道路などインフラ整備が不可欠である。

II.日本経団連側発言要旨

日本経団連側からは、片田副会長より金融システムの安定化、西室副会長より公的年金制度改革に向けた取組み、前田企業人政治フォーラム会長代行より日本経団連の政治への取組み、高原副議長より総合規制改革の取組みについて、それぞれ活動報告があった。また自由討議に際し、柴田副会長より技術開発力の強化と人材育成、西室副会長より地方分権の推進、奥井副会長より今後の住宅政策に向けた取組みについてそれぞれ発言があった。最後に、奥田会長より、北陸におけるさまざまな取組みを踏まえつつ、日本経団連として経済活性化に向けて積極的に取り組んでいくとの総括があった。

《担当:関西事務所》

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