経済くりっぷ No.11 (2002年12月24日)

11月26日/第2回起業フォーラム(代表世話人 高原慶一朗氏)

企業間連携を実現し、新産業・新事業の創出を!


新産業・新事業委員会の活動の一環として、本年7月に立上げた「起業フォーラム」の第2回会合を約160名の参加を得て開催した。高原代表世話人(新産業・新事業委員長)の挨拶に続いて、慶應義塾大学の島田晴雄教授から「新産業・新事業創出を目指して・生活産業創出のすすめ」と題する基調講演があり、その後、企業間連携をテーマに、ドリームインキュベータの堀紘一社長の司会進行により、ベンチャー企業側、大企業側それぞれ2名をパネリストに迎え、実例を踏まえながら意見交換が行われた。以下はその概要である。

I.高原代表世話人挨拶

わが国経済の活性化には、規制改革、税制改革、起業家精神の涵養が不可欠である。本フォーラムもその一翼を担っている。
参加者の方々には、第1に、フォーラムを通じて目標を掘り下げるべく、「高志低身」の心構えで臨んでほしい。第2に、技術力、マーケティング力、マネージメント力、経営者としての志について自社を再評価する機会としてほしい。第3に、本フォーラムを、具体的な方策を会得する決定的瞬間としてほしい。

II.島田教授 基調講演

  1. 日本経済は閉塞感に包まれているが、20世紀型産業に目を奪われている限り、突破口は見出せない。21世紀型産業に活路を見出さなければならない。21世紀型産業は、家庭、地域等、身近なところにある。次代のリーディング産業は大企業ではなく、生活者の立場で先見性を発揮して需要を創造する人々、企業が形成していく。
    具体的には、高齢者のケア問題に着目して「安心を提供する総合ケア産業」、高齢者の財産管理の一環として家のリフォーム、メンテナンスを行う「資産価値の減らない住宅産業」、働く家庭を支える「子育て支援産業」などがあげられる。

  2. それらの新しいサービス産業を創出し、雇用の増加につなげていくためには、IT、ナノ、バイオといった最先端技術を活用する必要がある。また、徹底した規制緩和も必要である。例えば、ケアハウスは社会福祉法人がほぼ独占し、補助金で運営してきたが、政府では不要になった学校用地などを有効利用できるようにすることで補助金なしで運営可能な「安心ハウス」構想を進めている。

III.意見交換

1.杉山尚志 リアルビジョン社長

海外の大手半導体メーカーは、専業メーカーとして成功している。日本の総合半導体メーカーも分社化を一層推進し、専業メーカー群を創出していく必要がある。そうすることによって初めて技術系ベンチャー企業との対等な立場での連携が自然に生まれてくるようになる。
国がプロジェクトを提案し、参加を募ることも元大手系専門半導体企業群とベンチャー企業群がわけ隔てなく連携するための一つの方法ではないか。

2.石田宏樹 フリービット・ドットコム社長・最高経営責任者

今まで、タイプの異なる大手企業二社との連携を経験した。最初の企業は当時学生であったわれわれに起業に参加するチャンスを与えてくださった点では非常に画期的であるが、われわれが提供したノウハウなどを自社のノウハウとして取り組むシステムが確立されていなかったことが残念に思われる。経営トップとの交流も皆無であった。もう一つの大手企業とはトップダウンで非常にスピーディーに連携がスタートしたが、実務レベルでの調整に必要以上に時間がかかる場合も見受けられ、トップダウンをスピーディーに実務レベルに落とすシステムが不完全な部分がある事を感じた。
対照的な企業との連携を経験したことで、自社においては成長の痛みを感じながらもさらなるステップアップに向けた明確な指標を持つ事ができた。企業とは本来永続的な存在であるべきで、「一回の成功」のみならず「継続的な成功」を生み出し続けるエンジンが常に求められることを感じている。

3.森田隆之 日本電気事業開発部長

インターネット接続事業のコンテンツの調達や、ソフトウェアのシステムインテグレーション分野では、他社との協業が進んでいる。一方、他社への投資は成功例が少なく、協業と投資は区別して考えたほうが良いと感じている。また、新規事業の立上げは手間がかかり、苦労も多い。
コーポレートベンチャーの再生に携わった経験から言うと、資金管理、生産管理等を行うバックオフィスにも優秀な人材を置く必要がある。一般的に、ベンチャー企業は、売上高10〜20億円規模で一つの正念場を迎える。それを乗り越えることができるか否かがポイントとなる。

4.高城幸司 リクルート首都圏HRDVマーケティング開発部兼アントレ編集企画Gエクゼクティブマネージャー

ベンチャー企業と大企業との連携が実を結ぶのは、100〜200の案件で一つあるかどうかの確率であり、特に大企業はめげずに根気よく取り組む必要がある。ベンチャー企業は、アイデアを盗まれてしまうのではないかなどの不信感を大企業に対してもっており、それが両者の連携を阻んでいる。一方、大企業には自身が気づいていない経営資源が埋もれており、ベンチャー企業がそれらを発掘し、活用する目利きができれば、連携は成功する。
ベンチャー企業は、社長がキーパーソンであることは言うまでもないが、社長を支えるバックオフィス機能が必要である。特に大企業経験者がいると心強い。

5.堀 紘一 ドリームインキュベータ社長

経済が高度化・複雑化しつつも低成長である中、企業にとっては特定の分野に専門化・特化することが生き残る道の一つである。日本の大企業は、最近漸く自前主義を捨てて変わってきたが、未だサプライヤー・ロジックの考えから脱し切れておらず、歩みも遅々としている。ベンチャーも、アイデアだけではビジネスとはならないことを理解すべきである。アイデア+αで大企業が簡単には真似の出来ない工夫を凝らすことが重要である。常識を超えなければならないが、常識を知らずして常識を破ることはできない。また、ベンチャーは大企業と連携する場合、相手の意思決定プロセスが自分たちのプロセスとは異なることを理解し、経営トップとミドルマネジメントの2ヵ所に窓を開け(複数のコンタクトポイントを持つ)て風通しを良くするなど、工夫を凝らすことが必要である。

《担当:産業本部》

くりっぷ No.11 目次日本語のホームページ