12月9〜10日/第30回東亜経済人会議
東亜経済人会議日本委員会(委員長:香西昭夫氏)では、1973年以来毎年、台湾の経済人との間で東亜経済人会議を開催している。2002年度は12月9日と10日の両日、経団連会館で第30回会議を開催し、日本側からは香西委員長はじめ88名、台湾側からは辜濂松東亜経済会議台湾委員会会長はじめ52名が参加した。9日には、第30回会議の記念講演会を開催し、奥田会長が「日本経済の現状と日台経済関係の新たなる発展に向けて」と題して講演を行ったほか、10日の本会議では、双方の経済情勢、東アジアの国際分業体制と今後の見通しを踏まえ、日台FTA締結の可能性と課題について討議した。以下はその概要である。
日台経済関係は、IT分野に見られるように垂直分業から水平分業へと移行しており、相互補完の関係にある。また、台湾のWTO加盟に伴う自由化措置などにより、従来、日本企業が台湾とのビジネスを行う際に直面してきた問題の多くは解決されつつあり、今後、台湾との貿易・投資の機会は増大するであろう。
一方、東アジア全体の経済情勢に目を向けると、貿易自由化や経済連携強化に向けた動きが活発になっている。日本経団連としては、日本がリーダーシップをとって、日本、中国、韓国、ASEAN、台湾、香港を含めた、統合された東アジア市場の形成に努めていくべきであると考えている。
東亜経済人会議は、日台間に国交がない中で、双方の経済交流の促進に大きく貢献してきた。今後も主要な役割を担うことを期待している。
<台湾側説明>
台湾経済は海外需要が成長の牽引役となってはいるものの、産業構造の転換や製造業の海外への移転などの影響を受けて、失業率が5%台に上昇している。また、金融市場では、資金のオーバーサプライが深刻化し銀行の経営は苦しくなっているものの、政府による金融再生・産業再生政策が取られており、不良債権比率は低下している。
対中投資に関しては、引き続き増加しており、両岸の経済貿易依存度が高まる一方、台湾の産業空洞化の進行が懸念される。また、台湾でもデフレへの懸念があり、国内需要の喚起が急務である。
<日本側説明>
中国経済の台頭とさらなる市場経済化、WTO加盟が東アジアや世界の経済に大きなインパクトをもたらしている。例えば日台双方のIT関連企業は、中国の華南地域や上海など華東地域への進出を加速させているが、こうした対中投資の拡大により、産業空洞化の懸念が生じている。しかし、中国の成長は、輸出依存度の高い東アジアにとって、新たな輸出先や投資機会の拡大というプラスの効果があることから、中国といかに共生し、共に発展していくかを検討すべきである。あわせて、東アジア域内の協力と地域内連携を推進し、新たな生産分業体制を構築することにより、東アジア全体の競争力を高めていく必要がある。
<台湾側説明>
グローバル化と知識経済化の進展、中国の台頭を受けて、東アジア域内の貿易依存度が高まっている。また、対中投資が増えており、中国の生産拠点からの持ち帰り輸出が増えている。
今後は、日本では主にR&Dと設計を行い、台湾がR&Dの一部と製造を担う。また、東南アジア諸国と中国は委託生産の基地となり、製品は日本、中国、欧米などの市場で販売するという分業体制が構築されるであろう。こうした中で日台間の産業協力がますます促進される。
<共同報告の発表と採択>
日台双方の委員会は、2001年10月の平沼経済産業大臣と台湾の林信義経済部長(当時)との合意や、同年12月の第29回東亜経済人会議での合意を受けて、約1年にわたり日台FTAの締結の可能性を検討してきた。そして、その成果を日台の共同報告として発表した。
共同報告では、双方は以下の3点を結論として提示し、参加者の同意を得た。