経済くりっぷ No.12 (2003年1月14日)

12月4日/企業行動委員会企画部会(部会長 池田守男氏)

今なぜコンプライアンスなのか

−企業行動をめぐる最近の動向〜消費者政策の視点から


一連の企業不祥事を受けて、日本経団連では10月15日に「企業行動憲章」の改定を含めた「企業不祥事防止への取組み強化について」を理事会決定した。一方、政府や国際機関において企業行動に関与しようとする動きが活発化している。そこで、国民生活審議会消費者政策部会自主行動基準検討委員会委員長である、一橋大学大学院法学研究科の松本恒雄教授から、企業行動をめぐる最近の動向について話をきいた。また、企業倫理・企業行動に関するアンケート調査(案)を審議し、各社に回答にご協力いただくこととした(12月10日に調査票を送付)。

○ 松本教授講演要旨

1.今なぜコンプライアンスなのか

企業は不祥事により消費者等のステークホルダーズの信頼を失うと市場からの退場を余儀なくされる。また、コンプライアンスへの取組みが市場競争力の強化や企業価値の増大につながるという考え方も出てきている。一方、消費者政策は、1960年代の行政規制、製造物責任法等の民事ルールの整備を経て、企業の自主的取組みやコンプライアンス経営への注目と変化してきており、行政の役割も変化している。

2.自主行動基準とコンプライアンス

国民生活審議会消費者政策部会は、消費者対応に関する自主行動基準の策定と運用に関する指針を取りまとめ、4月に中間報告を公表した(12月17日に最終報告)。
同報告は、今後の消費者政策の一環として、事業者に対して法令に上乗せした自主行動基準を策定・公表させることで、上乗せ競争により消費者利益の増進を図ることと、そのためのコンプライアンス体制の構築を求めている。

3.公益通報者保護制度(仮称)

また、同審議会では、最近の企業不祥事の多くが内部告発により発覚したことから、公益通報者保護制度(仮称)を早期に立法化し、内部告発者の保護(解雇権の制限等)を図る必要があるという意見が強くなっている。個人的には、制度には、それによる個別の救済が多くなされるというよりも、事業者が従業員の目を意識し、経営の透明性を高める効果があることに意義があると理解している。

4.ISO(国際標準化機構)等における企業の社会的責任の規格化の動き

企業の社会的責任については社会的責任投資(SRI)の動向とともに、ISOにおいても規格化の動きがある。本年6月のISO消費者政策委員会は企業の社会的責任をISOのマネジメントシステム規格として策定すべきだと決議し、ISO理事会の下にハイレベルの戦略諮問グループを設置した。来年3月頃までに規格化の是非についての結論が出よう。

《担当:社会本部》

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