経済くりっぷ No.13 (2003年1月28日)

12月24日/日本経団連評議員会

平沼赳夫 経済産業大臣

来賓挨拶

産業競争力強化のための重点4分野

平沼赳夫 経済産業大臣



日本をめぐる数字を見ると陰陰滅滅とした気分になるが、私は悲観していない。日本には、まだまだ産業競争力や技術でポテンシャリティがある。

奥田会長をはじめ多くの経済人にも参加いただいて、昨年(平成13年)11月、経済産業省に産業競争力戦略会議を立ち上げ、約半年にわたり侃侃諤諤の議論をした。そして「ものづくり日本」の競争力強化の戦略をたて、経済財政諮問会議でも、それを中心に議論して、日本の重点4分野をうちたて、それを平成15年度予算に反映した。

4分野とは、情報通信・IT、環境・エネルギー、バイオテクノロジー、そして日本が得意なナノテクノロジー・材料である。経済産業省は、この重点4分野における実用化直結型の研究開発プロジェクトを「フォーカス21」と名づけ、産業競争力強化のために、予算にも反映させるべく努力してきた。

小泉内閣は、30兆円の枠内で、平成14年度には補正予算を組まないという方針だったが、私は、不良債権の処理と同時に経済の活力を高めることも必要だと思い、二ヵ月半ほど前、補正予算の重要性を訴えた。そして、平成14年度補正予算を組むことになった。その特徴として、セーフティーネット強化のために1.5兆円を用意した。これは中小企業と雇用のためのものである。中小企業の不良債権を処理すれば痛みが生じるが、その中で、能力とやる気のある中小企業を救っていかねばならない。そのために約10兆円の政府保証を提供する。

残りの1.5兆円は、従来型ではない公共事業を行う。

私は、この補正予算の力点を、経済を活性化するために置くことができて、よかったと思っている。

もうひとつは税制である。今回の税制改正では、政策減税を中心としたことに大きな特徴がある。とくに、産業競争力強化のための重点4分野が税制にも反映されて、IT投資と研究開発促進のためにそれぞれ約6,000億円の減税が実現した。この他、土地の流動化、生前贈与を含めて資産の流動化も促進できた。

また、本日の閣議で、平成15年度予算の概算が決定される。この予算は、ある意味で厳しいものだが、メリハリが効いたものになっている。とくに研究開発においては、良い種があっても、それを実用化に結びつけることが難しい。かつて米国は、これを「死の谷」と呼んだが、それを越えなければ実用に結びつかない。平成15年度予算では、研究開発を実用化に結びつけていく予算を確保できた。

来年度は、厳しい年になると思うが、経済界の皆様が、かつて世界が瞠目するほどの大きな経済発展を遂げた大きな潜在力をもって心を一つにしてがんばれば、21世紀も日本が持続的な経済発展を遂げることは不可能ではない。そのためにも、政治の責任は重いが、本年5月に誕生した日本経団連にも、奥田会長の下で、政治・行政とともに、がんばってもらいたい。


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