経済くりっぷ No.13 (2003年1月28日)

12月24日/日本経団連評議員会

塩川正十郎 財務大臣

来賓挨拶

平成15年度予算と税制改革に正しい理解を

塩川正十郎 財務大臣



皆様のご理解を得て、何とか経済の底固めが進んでいるが、是非もう一段辛抱していただき、日本経済の基盤を強固なものにしたい。

小泉政権発足後1年半ほど経つが、役所の考え方は、相当変化している。全てのものが改革に向かって足並みを揃えてきており、予算編成も変わってきた。

第1に、平成15年度予算の当然増を、前年度の約1.4兆円を下回る水準に抑えた。そのために、たとえば、物価の大幅下落を予算上でも評価し、行政単価を厳しく見直した。また主計局の担当者を公共工事の現場、福祉事務所、ハローワーク等の予算執行の現場に派遣して予算使用の実態を調査した。その結果、社会的ニーズに遅れたものや、縦割り行政ゆえの予算の過不足が明確になった。おかげで予算の組み替えの必要性と効率化に関する意識が変わってきた。雇用、一般福祉行政、教育、防衛などの予算が、多すぎるポケットに少しずつ配分されてきたこともわかったので、これも見直した。

また、官でやってきたことを民間に委託して節約したことも大きい。一例として、防衛庁は、乗用車とトラックの整備を自前でやってきたが、それを民間に委託することにより、44億円を節約できた。

第2に、平成15年度予算では、メリハリをつけた。ひとつは社会福祉、セーフティーネットを十分に講じないと構造改革を進められないということで、社会保障経費を3.9%増額した。また産業の先端技術を開発する観点から、科学技術振興費を約4%と突出させた。その他の文教費、防衛、ODA、一般の公共事業は、平均4%削減し、トータルでは、平成14年度予算を上回らないように抑えた。この方針を、来年度以降も続けることによって、何としても2010年までにプライマリーバランスをゼロにしたい。

国債費は大幅に増加したが、これは平成13年度からの税収不足を清算せざるを得なくなったためだ。その結果、平成15年度予算は、前年度並みの81兆円強で、そのうち36兆円強を国債発行によって賄い、45兆円強が税等による収入で賄う。国債依存度は44.6%になった。

これでは政府の財政支出で景気刺激策を講じろといっても、なかなかでてこない。となれば、規制緩和をして思い切り民間活力を発揮してもらうことに重点を置かざるを得ない。また、さらに予算の効率化を進め、社会的ニーズのあるところや経済の活性化に結びつくところに集中して執行していくことが本筋ではないかと思う。

それを補完する意味において、今回の税制改正を行った。基本的な考え方は、民間活力をフルに発揮してもらうためと、個人の資産を有効に使えるようにするために、贈与税・相続税を大幅に減税した。親父が築いた財産を家族みんなで使おうという精神である。

また、民間の金融資金を株式投資へ活用してもらうためにも、大幅な制度改正をした。私どもがタウンミーティングで指摘された意見で最も多かったのは、株の売買に必ず税務署が介入してきて嫌になるというものであった。そこで、税務署と直接交渉しなくてもよいように、証券会社が源泉徴収の形で代行できるよう制度に変えた。税率も引き下げた。事業家の皆様には、是非とも株に魅力を持てるように努力してほしい。証券会社のセールスももっと分かり易く説明してもらいたい。

今般の税制改正では、個人に属する減税が40%近くで、60%が企業の試験研究費や設備費などに対する減税である。

消費税の益税問題については、タウンミーティングで不公平だとの意見が多かったので、中小企業や農業にも配慮しつつ免税点を1,000万円に引き下げた。

配偶者特別控除は、男女平等の面からおかしいので、元の制度に戻した。

たしかに最終責任は政治が負うものであるが、そこまでの努力は皆で共同であたるという精神でなければ、日本経済はよくならない。各位のご協力をお願いしたい。


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