経済くりっぷ No.13 (2003年1月28日)

12月24日/日本経団連評議員会

竹中平蔵 金融担当・経済財政政策担当大臣

来賓挨拶

2003年度は具体的な成長が問われる重要な年

竹中平蔵 金融担当・経済財政政策担当大臣



マクロ経済の大枠として、平成14年度の政府経済成長見通しは0%という厳しいものだった。ちょうど1年前、民間の経済シンクタンク14社が予想した平均成長率は−0.4%で、政府の見通しは甘いとお叱りを受けた。しかしながら結果的に、今年度の経済成長の見込みは0.9%の見込みで、言われていたほどではなかった。

もうひとつ、補正予算に象徴されるように、税収が大幅に落ち込んだ。それは、名目成長率、物価の下落が予想より厳しかったからである。

デフレと不良債権の悪循環を絶つためにも、一歩踏み込んで不良債権処理を加速するべきというのが小泉総理の判断で、そのために、10月に金融再生プログラムを用意した。その要旨は、資産査定をきっちりやる、自己資本を充実する、コーポレートガバナンスをしっかりやる、というあたりまえのものばかりである。金融庁も改めるものは改め、銀行も企業も意識を共有して、前向きに努力すべきである。

先般、15年度の経済見通しを0.6%程度と発表した。これについても、民間のシンクタンクは0.2%を予測しており、国際機関は0.6%から0.7%を予測している。政府見通しは、先般の補正予算と先行減税の効果を見越したためで、実際には、民間の見通しより厳しいと思う。

今回の予算編成と先行減税で注意してきたことは、中長期的には、10年程度でプライマリーバランスを回復するというマクロシナリオを堅持することである。

短期的な経済の不安定さについては、マクロ的な観点から、財政をしかるべき範囲内で活用する。

具体的にいえば、来年度には、国民の負担増がいろいろな形で用意されている。また、14年度の補正予算で行った公共投資の効果が来年度はなくなる。この2つは、金額で5〜6兆円、GDPの1%ほどを政府が国民から吸い上げることになる。この1%分をどうしても相殺しておきたかったので、補正予算で税収不足を補うほかに3兆円の国費を投入する。また、15年度予算の中で、1.8兆円の先行減税を行う。この4.8兆円を政府が出すことにして、政府が吸い上げる分を帳消しにする予算を組んだ。

一方で、中長期的な財政健全化のシナリオは、どうしても崩したくない。補正予算等を行った結果、本年度末のプライマリーバランスは、GDP比5%強の赤字である。これを10年間で解消していくためには、毎年、単純平均でGDP比0.5%ぐらいの財政収支改善が必要となる。1990年代に欧米で財政の健全化を達成した国では、大体、毎年0.5〜0.7%の収支改善を行った。このような諸外国の例にならえば、何とか日本も10年程度でプライマリーバランスを回復させることができることになる。われわれは、何とかこのシナリオを堅持したいので、極めて狭い道をぎりぎりのところで歩もうとしているのだと、ご理解いただきたい。

最後に、デフレを何とかしたい。デフレの要因は様々だが、物価の下落は、すぐれて金融的な現象である。不良債権処理を進め、銀行が健全な金融仲介機能を回復することによって、マネーの供給が増えていくよう、金融庁がしっかり政策を執行することが必要である。同時に、日本銀行が、金融の一層の緩和に向けて、さらなる努力をする必要がある。政府日銀が一体となってデフレ克服に努めていくことが必要だ。

来年度は、そういう意味で、デフレ対策、金融の改革、財政の健全化、特区をはじめとする規制改革の一層の推進など、小泉構造改革内閣の真価、具体的な改革の成果が問われる重要な年になると思う。

しかし経済の主役は民間企業である。皆様の努力によって、日本経済が新しい方向に向かって欲しい。


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