経済くりっぷ No.13 (2003年1月28日)

12月24日/日本経団連評議員会

武 大偉 駐日中華人民共和国大使

来賓講演

日中経済関係は今後も拡大する

武 大偉 駐日中華人民共和国大使



日本経済は、日中関係の絶え間ない発展を推進をするための重要な力である。中国は一貫して日本経済界との友好協力を重視してきた。
日中国交正常化30年来、日本経済界は積極的に中国との経済、貿易関係を発展させ、中国の改革開放と社会主義市場経済建設に参加してきた。
中国経済の急速な発展に伴い、日本経済界の中国に対する投資の意欲は一段と高まっている。今年に入って、新たに2,000社あまりの日本企業が中国に進出した。日中両国間の貿易額は、今年、1,000億ドル程度を見越している。

中国の改革開放路線と社会主義市場経済

中国の社会経済は、ここ20数年間で、重大な成果をあげた。小平氏は、改革開放政策を実施し、中国現代化の歴史的船出をした。江沢民氏を中核とする中国第3世代指導グループは、この道に沿って社会主義市場経済の体制を確立した。
2001年の中国のGDPは1兆ドル(世界第6位)に達し、1989年の2倍近くに増加した。年平均伸び率は9.3%である。人民の生活は、全般的に衣食の問題を解決したレベルから、ゆとりのあるレベルへの歴史的な飛躍をなしとげた。中国市場は、売り手市場から買い手市場へと変わり、商品やサービスの価格の90%が市場により決まっている。

WTO加盟により飛躍する中国経済

中国経済は、WTO加盟に伴い、世界経済との結びつきが一段と密接になった。2002年の貿易総額は6,000億ドルを超え(世界第5位)、外貨準備高は2,500億ドル(世界2位)である。外資導入は、500億ドルで9年連続して発展途上国の第1位を占めている。国家財政収入も増加し、2001年には2,000億ドルになった。
中国の経済構造は、次第にバランスがとれるようになり、経済成長の質と収益も日増しに高まっている。サービス業と情報産業は、経済成長の新たなスポットになっている。
三峡ダム水力発電所、西部の天然ガスを送るパイプライン、チベット鉄道、揚子江の水を北に引き込む「南水北調」など、一連の山河を改造するプロジェクトが全面的にスタートした。

中国人民の生活も著しく改善

中国人民の物質生活と文化生活は、著しく改善された。8億の農村住民の純収入は、1990年に比べて62%増えており、都市部住民の収入は倍以上増えた。平均寿命は71.4歳で、世界平均より5歳長生きである。1人あたり住宅面積は、都市部10m2、農村部25m2となっている。家庭用電気の普及も基本的には進んでいる。自家用車の保有台数は、約600万台である。高等教育入学率は12%に達している。観光が新しい流行となり、2001年の国内旅行者数は延べ7.8億人、海外旅行者数は延べ1,213万人となっている。固定電話の設置数は、2億世帯を突破し、携帯電話の利用者も2億人を超えた。インターネットを週1時間以上アクセスしている中国人は、4,500万人を超えた。2万キロ近い高速道路網、多くの空港を新設・改装し、鉄道輸送も大きく改善した。

一層強まった中国共産党の役割

改革開放の成功の中、中国共産党の政権党としての役割は一層強まった。中国共産党がなければ、新中国も、中国の現代化もない。これは、中国各民族、人民のコンセンサスである。
江沢民氏の提唱した3つの代表(中国共産党は、中国の先進的生産力の発展の要請を代表し、中国の先進的な文化の前進の方向を代表し、中国の最も広範な人民の根本的利益を代表しなければならない)という重要思想は、すでに中国人民を指導する旗印となっている。

今後20年の中国の開発目標

全面的にゆとりのある社会を建設することは、中国が今後20年にわたり取り組んでいく方向である。1人あたりの経済水準は比較的低くて日本の2.3%に過ぎず、まだ満足できる水準にない。地域間や都市と農村部の発展の格差も大きい。科学技術と教育も、立ち遅れている。人口は引き続き増加し、高齢者比率もたえず増加傾向にあり、就職と社会保障の圧力は増している。民主、法制、思想、道徳の面については、一部見逃してはならない問題も抱えている。
以上の国情に基づいて、今世紀の最初の20年間において、われわれの目標は、次の4点である。

  1. GDPを2020年までに2000年比4倍にする。
  2. 社会主義の民主と法制を一層充実する。
  3. 思想、道徳、科学、文化、健康の資質を著しく向上する。
  4. 持続可能な発展の能力を高める。
これらの目標を達成するために、われわれは、発展に新たな発想を、改革に新たな突破を、開放に新たな局面を、諸活動に新たな措置を持たなければならないと強調している。

中国の成長はアジア、世界の利益

中国の発展は、アジア全体の発展レベルをひきあげ、世界の平和と発展に有益である。
第二次世界大戦後、東洋文明は、再びあるべき輝きを取り戻した。われわれアジア諸国人民は、アジア諸国の経済発展を誇りに思うべきである。われわれが引き続き、お互いに支持し合い、密接に交流し、協力を深め、ともに人類文明のために、より大きな貢献をすべきだと思う。これがアジア諸国の長期的共同目標、日中両国の長期的共同利益である。

中国の発展は日本のチャンス

小泉総理も、今年4月のボアオ・アジア・フォーラムで述べられたように、中国の発展は、日本にとってチャンスであって脅威ではない。
日中両国間の経済協力と交流が、引き続き発展し、両国と両国人民に幸せをもたらすよう希望する。

日本経団連への期待

日本経団連は、一貫して中国と日中関係に関心を寄せてくださった。皆様がこれからも中国各地を訪問し、理解を深め、両国の善隣友好協力関係増進のために新たな貢献をしていただくことを希望している。


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