経済くりっぷ No.13 (2003年1月28日)

12月16日/ヨーロッパ地域委員会企画部会(部会長 紿田英哉氏)

持続可能な開発の実現に向けたEUの環境政策


ヨーロッパ地域委員会企画部会では、明海大学不動産学部の柳憲一郎教授を招き、EUの環境政策の動向について説明をきくとともに、意見交換した。

I.柳教授説明要旨

1.第6次環境行動計画の採択

EUの環境政策が初めて明らかにされたのは、環境行動計画の策定を宣言した1972年10月のパリ首脳会議である。その後、第1次から第5次の環境行動計画がそれぞれ策定されたのち、2002年7月には今後10年間の環境政策の基本指針である「第6次環境行動計画案」が採択された。
この第6次計画では、「気候変動問題」、「自然保護と生物多様性」、「環境と健康」、「天然資源の持続的利用と廃棄物」の4つの重点領域において、欧州の持続可能な開発を実現するための環境方針と目標を掲げている。

2.5つの戦略的アプローチ

第6次計画の基本方針は、規制を確実に実施しつつ、環境配慮を他の政策への内生化・統合化を深め、社会全体として取り組めるような革新的アプローチを常に取り入れていくとしている。
そのための5つの戦略的アプローチとして、

  1. 加盟各国に対しEU指令の確実な履行を求め、また、「エコラベル」制度の活用などにより規制手段以外の自主的な取組みを促進する、
  2. エネルギー、運輸、産業、農業など他の政策を企画立案する早期段階において環境配慮を組み込む、
  3. 環境目標の達成に向けて市場メカニズムを活用する、
  4. 市民が環境問題に対する情報発信者としての役割を果たす、
  5. 土地利用計画や土地管理に関する意思決定の際には早期段階での環境アセスメントの実施を義務化する、
ことを定めている。

3.市民に対する権限の付与

環境問題に関する意思決定の透明性と効率性を高め、行政機関の説明責任を拡大することは、EUにおいても大きな課題である。そのための方策の一つとして、環境問題に関する情報へのアクセス、意思決定プロセスへの市民の参加、そして裁判へのアクセスの権利をそれぞれ法的に明確化することで、市民の意思決定への参加を促進する流れがある。

II.意見交換要旨

日本経団連側:
環境政策策定への企業の関わり方はどうか。
柳教授:
市民団体の声がより重視されるようになっているものの、特に予防原則などでは企業のロビー活動も活発である。

日本経団連側:
WEEE(電気電子機器廃棄の削減)やRoHS(電気電子機器に含まれる特定有害物質の使用制限)に関するEU指令が出されるなど、EUレベルでの規制が進む一方で、各国レベルでは取組みにはバラツキが見られ、企業として対応に苦慮している。
柳教授:
EU指令を出しても各国の足並みが揃わないことは、環境政策の弱点であった。今後は、各国の履行状況のチェック機能を強化しようとしている。
《担当:国際経済本部》

くりっぷ No.13 目次日本語のホームページ