経済くりっぷ No.13 (2003年1月28日)

11月28日、12月6日/日本アルジェリア経済委員会(委員長 重久吉弘氏)

治安の改善と経済回復が順調に進むアルジェリア


日本アルジェリア経済委員会では、11月28日に外務省中東アフリカ局中東第一課の小林正雄地域調整官および経済産業省中東アフリカ室の守本憲弘室長から、同国の政治・経済の現状と展望について、12月6日にベンジャマ駐日アルジェリア大使から「アルジェリア経済の現状と今後の対日関係への抱負」について説明をきいた。これを踏まえて、12月18日にアルジェで200名(日本側70名、アルジェリア側130名)参加のもと、第4回日本アルジェリア合同経済委員会を開催した。

I.小林調整官説明要旨

  1. 今次合同会合は、1993年以来の9年ぶりの開催となり、大変な準備と調整が行われたと伺っている。アルジェリアは北アフリカの資源大国であり、ポテンシャルが高く、日本経済にとって重要な市場となる。外務省としては、今次合同会合が成功し、二国間通商・外交関係が緊密化するよう、支援をする。ただし、今すぐ経済協力を再開できるという状況ではない。今後、アルジェリア側の政治・経済情勢の動向を見極めつつ、経済協力の可能性について検討していきたい。現在、同国ではテロとの戦いが続いている。他方、民主化、自由化が着実に進められており、言論の自由など、開かれた社会が実現しつつある。それと平行して、都市部での治安は著しく改善され、テロおよび誘拐等の問題は、南部山岳地帯に限定されている。また、外国人に対するテロの問題は、基本的にはない。

  2. 1992年以降、国内テロにより10万人以上の犠牲者が出た。しかし、最盛期には2万7,000人いると言われた国内の複数のテロ組織の規模は、現在は700人にまで減少しており、ブーテフリカ政権のテロ撲滅への努力が如実に現れている。特に、アフガン帰還回教徒兵4,000人を擁していたテロ組織GIAは、ブーテフリカ政権によって、武闘路線を軟化し、150人規模にまで縮小した。これと平行して、1992年以降、在留外国人を標的としたテロ、要人誘拐等も減少し(120数名の在留外国人が犠牲)、1998年以降は外国人の被害は報告されていない。尚、国内少数民族であるベルベル人問題とテロ問題とは異なった次元のものであり、切り離して考える必要がある。

II.守本室長説明要旨

  1. 1970年代の社会主義政権時代以降、アルジェリア経済は石油産業に立脚したモノ・カルチャー経済体制が続いている。1989年以降、「価格の自由化」が導入されると、社会の貧困が表面化し、貧困層の経済に対する不満とイスラム原理運動とが連動し、政府対イスラムの抗争の構図が出来た。このように同国の治安・テロ問題は、経済問題が根底にある。

  2. 過去10年間、アルジェリア政府は同国経済の復興のため、IMF等による構造調整の受け入れ、公営企業の民営化の断行等を行ってきた。また、農業分野も順調に推移する等、1998年以来、同国経済は平均4%成長を維持してきた。このような好調な経済が追い風となり、ブーテフリカ大統領の構造改革推進に弾みがつき、治安問題など社会問題についても、著しく改善している。

  3. アルジェリアはマグレブ、地中海地域の盟主であり、南部の南アフリカとともに、アフリカ経済をリードする南北両極の要である。このような観点から経産省としては、同国に対して経済協力を実施し、関係を強化したいと考えている。2002年9月に大阪で開催された国際エネルギー・フォーラムに、ケリル同国エネルギー大臣が出席し、帰途、東京に赴き、平沼経産大臣、川口外務大臣と両国関係強化に関する話し合いが行われた。日本側は、ブーテフリカ政権の努力による国内治安の著しい改善を評価するとともに、アルジェリア側から、長期的な見地から技術供与に関する日本企業の協力、ブーテフリカ大統領の日本招聘について要望がだされた。

  4. 経産省は、アルジェリア側が同フォーラムにおいて、議長国として積極的に会議をリードしたことを高く評価する。また、経済関係強化の一環として、2003 年6月にアルジェで開催される国際見本市に対して、日本経団連の尽力により、日本からの参加企業の目途がついたことを感謝する。今次合同会合にも強い期待を持っており、同会議へ関係者を派遣することにしている。

III.ベンジャマ駐日大使発言要旨

  1. 今次合同会合に日本側から70名余が参加されることとなり、大変感謝している。アルジェリア政府も最善のおもてなしができるよう準備中である。また、アルジェリア経済は大変好調で、このような時期に、合同会合が開催されることは、日本アルジェリア双方にとって有益である。アルジェリア経済は、石油とガスの増産、経済の自由化推進により、ここ6年間でGDP成長率がゼロから約3%になった。政府は経済構造改革を推進するとともに、財政改革を断行してきた。その結果、マクロ経済は回復基調となり、国際収支も著しく改善している。

  2. これまでの日本企業の活動を高く評価している。しかし、日本経済の規模からすると、まだ不十分である。アルジェリア政府の経済再生3ヵ年計画には、エネルギー、天然ガス・石化大型プラント、道路・上下水道等建設事業、IT、金融関連設備等の有力案件が多数ある。これらの案件への、日本企業の参加を検討してもらいたい。

《担当:国際協力本部》

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