経済くりっぷ No.15 (2003年2月25日)

2月3日/貿易投資委員会総合政策部会(部会長 團野廣一氏)

WTO、FTA、地域間協力(APEC等)を通じた貿易円滑化の重層的な取組みが重要


モノの流れを迅速にするには、貿易円滑化に関する国際的な協力が必要となる。そこで、貿易投資委員会総合政策部会では、2月3日に財務省の浦西友義 大臣官房審議官他より、「貿易円滑化の重層的な国際的取組み」について説明をきいた。

○ 浦西審議官説明要旨

1.貿易手続き上の問題

モノを輸出する際に、企業がさまざまな苦労をしておられることを承知している。関税がいくら低くなっても、関税手続等の諸条件が改善されなければ自由化の恩恵を受けることは難しい。他方、貿易の秩序維持、関税徴収、社会の安全、健康確保等のために貿易手続規則が必要になる。ただし、これが差別的、不透明、過剰、非効率になると非関税障壁となる。そのため、行政効率の向上、貿易手続にかかるコストの削減を目指した貿易円滑化が重要になる。
貿易手続に見られる問題事例としては、差別的な取扱い、不透明、予見可能性の欠如、過剰な要求、非効率な手続、国際標準と非調和的な手続等がある。解決策としては、たとえば、

  1. 差別的な取扱いに対しては無差別原則の明確化、
  2. 不透明な運用については法令の公表、国際機関への通報等、
  3. 過剰な要求に対しては貿易手続の簡素化・標準化の原則確立等、
  4. 非効率な手続に関しては電算システムの整備等、
  5. 国際標準と非調和的な手続に対しては国際標準の採用、
が考えられる。

2.貿易円滑化のためのアプローチ

解決する枠組みとしては、

  1. WTO、WCO(世界税関機構)、
  2. FTA等のルール設定とAPEC、ASEM等におけるアクション・プログラム、
  3. 二国間、WCOを通じてのキャパシティ・ビルディング、
のアプローチがある。マルチでミニマムな原則を確保し、その上に地域、二国間、国別の取組みが積み上げられていく重層的アプローチを取ることが有益である。
WTOは、原則を決め、義務化することにより、途上国にとって分かりやすいプロセスにすることができる。民間企業がそれぞれの国で抱える問題を二国間で解決することは政治的にも難しい場合が多々ある。多国間交渉であれば、民間と当該政府の交渉ではなく、政府間交渉に持ち込むことができる。また、約束したものはWTO紛争処理の対象にもなる。
WTOでは、GATT第5条(通過の自由)、8条(輸入および輸出に関する手数料および手続)、10条(貿易規則の公表および施行)を見直して新しいルールづくりをすべく努力している。本年9月のカンクン閣僚会議でルール交渉に入るか否かが決まる。WCOでは、原則的な理論を確立し改正京都規約を定めた。現在、批准努力をしているところである。さらに、テロ対策についても取り組み始めた。貿易円滑化の流れとテロ対策をいかに調和させていくかが課題となっている。

《担当:国際経済本部》

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