経済くりっぷ No.16 (2003年3月11日)

2月21日/東海地方経済懇談会

活力と魅力溢れる日本の実現に向けて


日本経団連・中部経済連合会(中経連)・東海商工会議所連合会共催の標記懇談会が名古屋市において開催された。日本経団連側からは、奥田会長、岸・奥井・西室・樋口・柴田の各副会長、高原評議員会副議長が出席し、地元経済人約150名の参加のもと、東海経済界首脳と最近の経済動向や中部の主要プロジェクト等について意見交換を行った。また、懇談会に先立ち、奥田会長らは中部国際空港の現地視察を行い、同空港会社の平野幸久社長より、空港の概要、2005年開港に向けた建設の進捗状況等につき、説明を受けた。

I.東海経済界側発言要旨

1.開会挨拶
  太田宏次 氏〔中経連会長/中部電力会長〕

中部地域は産業技術集積を有する世界的なモノづくり中枢圏域として、わが国の経済をリードしてきた。この優位性を活かしつつ、さらなる発展を期すためには、高度な新技術・新産業の創出が重要である。そのために中経連では、「ベンチャービジネス支援センター」を設立し、ベンチャーの芽を育むための積極的な支援活動を推進している。また「中部産業振興協議会」等において、産学官連携による企業等の誘致や新産業育成を進める素地を整備してきた。
中部地域では、中部とわが国の21世紀の発展にとって不可欠なプロジェクトとして、2005年の万博開催、中部国際空港の開港を推進している。万博については、「愛・地球博」の愛称で地元の認知度は高まっているものの、全国レベルでは不十分である。本年9月より前売り入場券の販売が始まるが、国内外での万博の認知度を上げるため、博覧会協会の活動を支援していきたい。
また、中部国際空港については、開港に向けた準備が急ピッチで進んでおり、開港時期の前倒しも検討されている。万博の成功と空港の機能発揮を図る上からは、第二東名・名神高速道路、東海環状自動車道など関連アクセスの整備が極めて重要である。

2.東海経済の現状とモノづくりの強化
  加藤千麿 氏〔名古屋商工会議所常議員/名古屋銀行頭取〕

当地域では製造業が産業の中心である。最近の統計によれば、鉱工業生産、機械受注、輸送用機器・一般機械等の輸出が堅調で、全国の中では比較的景気が良い地域と言えよう。しかし、個々の企業レベルや中小企業においては非常に厳しい状況が続いている。名商では、中小企業の活性化こそがデフレの克服、日本再生につながると考え、経営革新や新事業展開に取り組む中小企業を強力に支援していく。
当地の製造業では産業空洞化が懸念されているが、コア技術の水準では未だに優位性を保っている分野も少なくない。しかしながら、人、モノ、金などの資源に乏しい中小企業が単独で技術開発に取り組むには限界があり、名商では、愛知県、名古屋市、名古屋大学等と連携を取り、「産学交流テクノフロンティア事業」を実施している。
また、地域としての国際競争力を強化する上からは「ブランド力」が重要である。当地域でも、自動車産業やセラミックス、工作機械、航空宇宙産業など、世界有数の企業集積を一大ブランドとして世界に発信していく必要がある。この観点から、名商では2002年度より、モノづくりに優れた中小製造業を発掘し、世界に情報発信していく「モノづくり・ブランド・NAGOYA」事業を開始した。同事業を通じてモノづくりの文化を育み、「メイドインナゴヤ」を広く国内外にアピールしていきたい。

3.中部の観光産業振興に向けて
  木村 操 氏〔中経連副会長/名古屋鉄道社長〕

中経連では、先般、提言「中部の観光産業振興に向けて」を取りまとめた。観光産業の現状は、全国各地の観光地で入込客の減少から旅館や観光施設が閉鎖されており、当地の観光地も苦戦を強いられているが、当地域は幸い、2005年に中部国際空港開港と「愛・地球博」開催を予定しており、これを機に観光を当地域の新たな産業として捉え、国際競争力のある産業として育成していくことが重要である。
提言では、第1に、観光産業の構造改革推進を訴えている。近年の旅行客の多様なニーズに応えるべく、業界自らが構造改革を推進し、グローバル化に対応していく必要がある。第2に、観光行政の一元化と適切な振興体制の確立である。内閣府に主務担当大臣を置いた観光行政専門機関を創り、人・資源・情報を集中させ、迅速かつ効果的な振興行政を進める必要がある。第3に、(1)広域行政ネットワークの形成と観光交流軸の整備、(2)中枢都市・名古屋を中心とした新たな大交流エリアの創出、(3)東南アジア諸国との連携による交流拠点の形成、を提言している。モノづくり中部の産業観光をアジア諸国にPRし、アジアからの観光客増加を図ることも重要な課題である。

4.フロア発言

自由討議において、地元側より以下の意見がだされた。

  1. 自己負担額がしばしば変更されること等が社会保障制度に対する不安につながる。持続可能な制度を構築する長期的なビジョンが必要である。
  2. 新技術・新産業の創出のためには、産学官連携の推進、知的財産の確保などに取り組む必要がある。
  3. 都市再生、中心市街地活性化の推進には財政・税制面の措置や各種規制緩和等が不可欠である。
  4. 真の地方分権を実現すべく、道州制の実現を目指していきたい。
  5. 構造改革を推進する上で、首都機能移転が必要である。
  6. 企業経営ならびに地域の活性化を進めるために、構造改革特区等、規制改革の積極的な後押しをお願いしたい。

II.日本経団連側発言要旨

岸副会長よりIT革命推進に向けた取組み、西室副会長より社会保障制度改革への取組み、さらに樋口副会長よりグローバル化時代に対応した教育基盤の整備について、それぞれ活動報告があった。また自由討議に際し、西室副会長より社会保障制度および地方分権社会のあり方、柴田副会長より観光産業の振興や新技術・新産業創出について、さらに、奥井副会長から都市再生への取組み、高原副議長から規制改革、構造改革特区についてそれぞれ発言があった。
最後に、奥田会長が、首都機能移転は国会が責任をもって決定すべき重要事項であり、国会における審議を見守っていきたいとコメントした。

《担当:総務本部》

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