経済くりっぷ No.16 (2003年3月11日)

2月14日/日本ブラジル経済委員会(委員長 室伏 稔氏)

ルーラ新大統領の下、引続き貿易投資の拡大に努めるブラジル

−フルラン ブラジル開発商工大臣と懇談


WTO非公式会合出席のため日本を訪れたブラジルのフルラン開発商工大臣より、本年1月に発足した労働党のルーラ新大統領の経済政策などについて説明をきいた。大手食肉加工会社SADIA社の会長から現職に就いた同大臣は、新政権は引続き貿易投資の拡大に力を入れるとともに、日伯間の一層の関係強化に向けて日本の奮起を期待すると発言した。

○ フルラン大臣発言要旨

1.ルーラ内閣の特色

ルーラ大統領は今回の組閣に当り、労働党と与党連合から多くの閣僚を任命する一方で、主要4閣僚(外務、法務、農業、開発商工)に専門家を配置した。私自身、ルーラ大統領から大臣就任の打診をされた時は驚いたが、大統領が国際関係と通商拡大を最優先課題とするとともに、メルコスールの再活性化と地域統合を重視する姿勢を確認し、引受けることにした。

2.米伯関係、FTAAへの取組みと市場の評価

ルーラ大統領は就任直前の昨年12月に、まずブッシュ大統領を訪問し、ワシントンで会談した。米国は当初、ルーラ新政権に対して批判的だったが、ルーラ大統領の中南米諸国の民主化推進に対する取組みによって、対応が変わった。実際、ルーラ大統領は通商開放に積極的に取り組んでおり、FTAA(米州自由貿易圏)に関して4月に閣僚レベルの二国間会議の開催で合意した。また、大手外銀でトップになった人材をブラジル中銀総裁に抜擢した人事は、市場に新政権に対する好印象をもたらした。さらに2月にブラジル政府は緊縮財政の方針を発表しており、GDP比4.25%の黒字目標は、IMF合意の3.75%より厳しいものである。

3.ルーラ大統領の政策について

ルーラ政権の国内政策の優先課題は、雇用拡大と飢餓ゼ口計画、年金改革、税制改革である。各省庁に対して大幅な予算削減を行う一方、重要分野として社会保障、教育、医療、通商関係の予算を維持した。
開発商工省、外務省、中銀が連携して輸出振興を積極的に進めることにより、40万人分の新規雇用を創出する。また、開発商工省では中小企業の連携強化により、輸出競争力の向上をはかる。中小企業育成については、日本の豊富な経験を参考にする。輸出に関するもう一つの取組みは、品目多様化、高付加価値化、ニッチ市場開拓であり、事業化の可能性を省内で検討している。

4.日伯関係の一層の強化に向けて

日伯経済関係は、ここ5年間貿易・投資ともに低迷している。両国には不況など様々な問題があるが、双方の潜在力を考えると本来あるべき姿から程遠い。鉄鉱石や原油などの天然資源に加えて、新規格のデジタルテレビや環境問題に貢献するガソリン添加物のエタノールなどの分野で、多くの新事業と商機がある。2002年、中国への輸出が初めて日本を上回った。日伯関係には長く深い歴史があり、今後日本の一層の奮起を期待する。

《担当:国際協力本部》

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