経済くりっぷ No.16 (2003年3月11日)

2月13日/貿易投資委員会(委員長 槙原 稔氏)

日本はWTO農業交渉と並行して抜本的な農政改革を進めよ


貿易投資委員会では、2000年より開始しているWTO(世界貿易機関)の農業貿易交渉に関して、本年3月末に交渉方式の大枠(モダリティ)の合意が予定されていることから、今後の展望と日本の課題について、東京大学大学院農学生命科学研究科の本間正義教授より話をきくとともに懇談した。

○ 本間教授説明要旨

1.WTO農業交渉の現状

2月12日、ハービンソンWTO農業交渉グループ議長が、交渉方式の大枠(モダリティ)に関する第1次ドラフトを出した。この案では、対立するWTO加盟国の要求のバランスが取られており、今後3月末に向けて、この案を軸に交渉が展開するだろう。

2.GATT/WTOにおける農業貿易

農業貿易は、GATT(関税・貿易一般協定)の時代から例外扱いされてきたわけではなかったが、輸入数量制限や補助金等の保護措置が事実上容認されてきた。
ウルグアイラウンドにおいて、農業貿易に関して、関税化による市場アクセスの改善、国内補助金・輸出補助金の大幅な削減を規定した新たな協定を締結した。
このことは画期的であったが、一部の品目について実質的に内外価格差以上の高関税等が残っており、現在のWTO交渉では、「公正で市場指向型の農業貿易体制を確立すること」(WTO農業協定前文)を目指して、さらなる自由化交渉が進んでいる。

3.各国の交渉提案

日本の交渉提案は、農業の多面的機能を基本哲学に据えているが、農業輸出国により構成されるケアンズ・グループ、米国等の案と市場アクセス等をめぐって鋭く対立している。
日本は、EU、スイス、韓国、ノルウェー、モーリシャスと「多面的機能フレンズ」を形成しているが、多くの発展途上国はケアンズ・グループ、米国の案を支持しており、日本提案が受け入れられる可能性は低いだろう。

4.日本農業の問題

日本の農業の最大の問題は農地である。農業には、土地利用型と、広大な土地を必要としないものの二種類がある。
コメは前者の土地利用型農産品であるが、日本の平均耕地面積は1.5haに過ぎず、米国の125分の1、欧州諸国の30〜40分の1である。
規模拡大(いわゆる「メガ農家」・「ギガ農家」の育成)は、中央集権的に行うのではなく、参入規制等をできる限り撤廃し、市場メカニズムを活用して進める必要がある。そのためには、株式会社による農地の経営を認めることが不可欠であろう。
ニッチ型の農家では、野菜等を中心に多くの新しい取組みが行われており、期待が持てる。

《担当:国際経済本部》

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