経済くりっぷ No.17 (2003年3月25日)

3月10日/森山法務大臣との懇談会(司会 御手洗冨士夫副会長)

内外の経済情勢を反映した企業法制改革を着実に推進

−会社法改正、司法制度改革の課題などについて懇談


日本経団連では、法務大臣はじめ法務省首脳と、毎年、通常国会前半の時期に通常国会提出法案を中心に意見交換を行っている。本年は3月10日に、森山眞弓法務大臣、増田敏男法務副大臣、中野清法務大臣政務官はじめ法務省首脳との懇談会を開催した。日本経団連側は御手洗・岸・西室の3副会長と高原・出井の両評議員会副議長ほか関係委員長・部会長が出席した。

I.御手洗副会長挨拶要旨

近年、商法、倒産法等の企業法制の重要な改正や司法制度改革が相次いで行われており、法務省の皆様に感謝する。
今国会では、議員立法で自己株式取得に関する商法改正をお願いしており、各社が2003年定時総会より利用できるよう、早期成立に理解を得たい。
また2005年の通常国会に向けた商法改正の議論においては、理念先行とならず、経済実態を踏まえた検討をお願いしたい。

II.森山法務大臣挨拶要旨

大臣就任以来、多数の会社法改正が行われ、目下、法制審議会では株券の不発行制度と商法の現代化について検討している。また、倒産法制では昨年の臨時国会で会社更生法の全面改正を行い、本年秋の臨時国会で破産法の全面改正を行う予定である。
一方、司法制度改革推進本部では、民事司法制度の改革が急ピッチで進んでおり、今国会に裁判の充実・迅速化の法案を提出している。これに関連して法務省は、民事執行法の改正案を近日中に提案する。
今後も内外の情勢変化を反映した経済法制改革に取り組んでいきたい。

III.増田法務副大臣説明要旨

会社法制の改革は、企業統治の実効性の確保、高度情報化社会への対応、企業の資金調達手段の改善、企業活動の国際化への対応の4つの柱の下で進められてきた。
次の商法改正課題としては、まず、本年秋の臨時国会への法案提出を目指している、株券の無券面化と電子公告制度の導入がある。また、平成17年の通常国会への法案提出を目指して、カタカナ文語体の法文を口語化し、用語を現代化すること、商法・有限会社法・商法特例法の統一と数次の改正事項を整合化することについて検討している。
倒産法制の改革としては、平成8年より民事再生法、個人債務者再生手続と外国倒産処理手続の創設、会社更生法の全面改正を進めてきた。本年秋の臨時国会では、破産法の大改正を行うので、会社更生法同様、日本経団連の協力を得たい。
その他、今国会では民事訴訟法、民法と民事執行法の改正を、司法制度改革審議会の意見書に沿って進めることとしている。

IV.日本経団連要望事項

  1. 定款授権により取締役会決議で自己株式取得ができるよう、議員立法での商法改正をお願いしている。今年の定時総会に間に合うよう、早期に改正を実現してほしい。
    また、平成17年の通常国会に法案提出予定の会社法の改正を前倒しできないか。
  2. 社外監査役が法定員数を欠くときに臨時総会を開催しないでもすむよう、補欠監査役を選任しておくことが現行法上できるとの解釈を明示してほしい。
  3. 委員会等設置会社と同様、監査役設置会社においても取締役の会社に対する責任を過失がなかった場合には責任を問われないものとし(無過失責任の過失責任化)、利益処分を取締役会決議事項とすべきである。
  4. 海外ではLLC(Limited Liability Company)、LLP(Limited Liability Partnership)制度を利用して事業活動を展開しているが、わが国に同様の制度がない。早期にわが国でも導入すべきである。
  5. 委員会等設置会社の委員会の権限が取締役会に比べて強すぎる。また、過去に一日でも子会社にいた者は親会社の社外取締役に該当しないという要件は厳しすぎる。要件を緩和すべきである。
  6. 知的財産分野や金融分野などの専門知識を有する企業法務の部員は自社の訴訟代理ができるようにすべきである。また、企業法務部員が関連会社に有償で法務サービスを提供できるとの解釈を明確化する方向での検討を評価する。

V.法務省側応答

  1. 現在も国会の法務委員会には法案が立て込んでおり、綱渡り状態で、提出された法案の成立を図っている。会社法改正の前倒しは困難である。
  2. 補欠監査役の選任が認められることについては、できるだけ早期に法務省の考え方を明示したい。
  3. 取締役の会社に対する責任の過失責任化については、その方向での検討が進められている。
  4. LLC、LLPは税制措置が必要であり、財務省と連絡をとりながら検討を進めている。
  5. 委員会等設置会社制度については、実際に各企業で活用する中で使いづらい面が出てくることが考えられる。改正すべき点があれば変えていきたい。
  6. 法廷外活動の弁護士法72条の活動は、対応の余地があるが、法廷活動はなかなかハードルが高い。

VI.中野法務大臣政務官締め括り挨拶

デフレ不況の中で産業の空洞化は深刻な問題となっている。世界の中で日本の法律制度は遅れており、商法改正を進める必要がある。一生懸命に取り組むので、司法制度改革でも日本経団連との連携を進めたい。

《担当:経済本部》

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