経済くりっぷ No.17 (2003年3月25日)

3月6日/防災に関する特別懇談会(座長 樋口公啓氏)

地方公共団体における防災対策の現状と課題

−静岡県と東京都の防災対策責任者にきく


防災・救援対策において、住民に最も近い地方自治体が果たす役割は大きい。第3回会合では、東海地震の想定地域である静岡県、首都機能が集中する東京都の防災対策責任者を招き、それぞれの地域における防災対策、企業に対する期待等について説明をきくとともに、意見交換を行った。

○ 説明要旨

1.静岡県 田邉義博防災局長

静岡県では、1976年8月の「東海地震説」発表以来、1.4兆円超の地震対策事業を行ってきた。この投資の被害軽減効果は、死者数で28%、建物被害で20%、被害額で16%となる。さらに地震予知があれば、投資額の約5倍、7.3兆円の被害が軽減できる。
阪神・淡路大震災以降、被災情報を迅速かつ正確に収集・分析して災害対策に活かしていくために、自営通信回線を含めた「総合情報ネットワークシステム」を整備した。また、自主防災組織の強化、県下9ヵ所の災害対策支部を支援するチームの設置、県民への啓発活動などのアクションプログラムを現在進めている。特に、実践的訓練を重視し、医療救護、輸送、物資調達などの分野ごとに全県下的な訓練をしている。それを集大成したものが静岡県の防災力となる。

2.東京都 徳毛宰防災部長

1997年に公表された被害想定では、M7.2の地震が区部直下で冬の夕方18時に発生した場合、371万人以上の帰宅困難者が出ると推定している。船舶やバスによる代替輸送では、1日12万人しか帰路につけないため、帰宅困難者の多くは、道路警戒が解かれたら徒歩で帰ることになる。主要幹線沿いの郵便局や都立学校、ターミナル駅周辺の都の施設などに、一時休息所を設け情報提供を行う。しかし、都だけでは解決できない問題であり、8都県市で連携し、図上合同訓練なども実施している。また、有楽町・日比谷・銀座地区でモデル事業を実施し、事業者向けの「帰宅困難者対応マニュアル策定のためのガイドライン」を作成してホームページで公表している。東京駅周辺および新宿区では企業を中心とする協議会で、帰宅困難者の避難から帰宅までの計画策定などの検討を進めている。

3.東京消防庁 鈴木正弘防災部長

阪神・淡路大震災の際、一時的に閉じ込められた人は、全壊家屋の30%の5.7万所帯で16.4万人いた。そのうち、79%が自力で脱出している。それ以外の3.5万人のうち77%が近所の人たちに救出され、23%が消防・警察・自衛隊などの公助により救出されている。また、死亡者の8割は発災当日午前中に亡くなっている。焼死者だけを見ると、81%が当日の午前に、16%が午後に亡くなっている。一時被害の生存者が火災という二次被害で死亡することを防ぐには、出火防止と初期消火が大切である。東京消防庁としては、自助、共助、公助ともに、出火防止対策、初期消火対策を重点に震災対策を進めている。

《担当:社会本部》

くりっぷ No.17 目次日本語のホームページ