経済くりっぷ No.17 (2003年3月25日)

2月28日/労使関係委員会政策部会(部会長 川合正矩氏)

「有期雇用契約の反復更新」と「正規従業員との均衡処遇」が課題

−非正規従業員活用の際の法的留意点


労使関係委員会政策部会では、経営法曹会議所属の弁護士である小根山祐二氏から「非正規従業員活用の際の法律上の留意点」について説明をきくとともに、多様化する雇用・就労形態と人材活性化に向けた人事・賃金管理について意見交換を行った。

I.小根山弁護士説明要旨

  1. 非正規従業員について法律的には定義はないが、

    1. 雇用契約に期間の定めがある従業員、
    2. 労働時間が正規従業員に比べて短い従業員、
    の二つの観点から整理ができる。前者については反復更新の問題、後者については正規従業員との均衡処遇の問題が企業経営上、課題になる。

  2. 有期雇用契約の反復更新の問題については、民法の「雇用契約の期間が終了すれば契約の効力は当然に終了し、労働者も使用者もその終了については格別の理由を必要としない」という原則を裁判例が修正してきている。有期雇用契約者の担う業務の客観的内容、継続雇用を期待させる当事者の言動や認識、更新の手続き・実態等を判断要素に、「雇い止めの効力の判断については解雇に関する法理を類推すべき」とされるケースもあることから、

    1. 有期契約で雇用することの目的の明確化、
    2. 正規従業員との処遇の違いを明確にすること、
    3. 当初の契約および更新手続きの厳格な管理、
    4. いったん生じた労働者の契約更新への期待を消滅させるのは容易ではないこと、
    などが人事管理上の留意点となろう。

  3. また、正規従業員との均衡処遇の問題については、まだ法律的には深い議論はされていないが、一つの裁判例として丸子警報器事件(長野地裁上田支部1996年3月15日判決)がある。この裁判例については、今後リーディングケースになるかもしれないし、特異な例として終わるかもしれないが、留意しなければならない点としては、

    1. 正規従業員との区別を明確にすること、
    2. 正規従業員への登用の道を開くことは有効であること、
    3. パートとして雇用することの目的を明確にすること、
    などがある。

II.意見交換要旨

日本経団連側:
契約更新は何回くらいが適切という基準はあるのか。それとも本当は絶対更新しないほうがいいのか。
小根山弁護士:
雇う時にかなり強烈に長期雇用を約束するなど、正規従業員と同じような扱いをしていた場合には、1回も更新していなくても雇い止めが無効となる例もある。裁判をやってみないと分からない。

日本経団連側:
非正規従業員に対する正規従業員への登用の道が広くなりすぎると、雇い止めは難しくなるのか。
小根山弁護士:
確かにさじ加減の難しい問題である。登用についても、非常にハードルが高いというのは問題となろうが、会社にも裁量の範囲がある。登用の機会を確保し、後はどう運用するかという課題となる。
《担当:労働政策本部》

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