経済くりっぷ No.18 (2003年4月8日)

3月11日/税制委員会企画部会(部会長 関 哲夫氏)

今後の税制の検討課題について

−経済産業省 今井企業行動課長と意見交換


平成15年度税制改正では2兆円規模の先行減税の成果があったが、本年も、6〜7月を目途に政府税制調査会が「中期答申」を取りまとめる予定であり、税制委員会では、引き続き「あるべき税制」について検討を進めることとしている。そこで、経済産業省の今井尚哉企業行動課長を招き、今後の税制の検討課題について説明をきくとともに意見交換した。

I.今井課長説明要旨

1.平成15年度税制改正について

企業の研究開発ならびにIT投資に対する税額控除と特別償却等を実現した。近々法案が成立の見込みだが、減税の一部は1月から遡及適用されるので、ぜひ今年度の投資計画から活用し、経済の浮揚に役立ててほしい。

2.外形標準課税について

16年4月実施とされており、法案がまもなく国会を通過する見込みである。夏までに政令、省令、通達が順次整備される予定であり、現在、総務省との協議を進めている。
16年度税制改正に向けては、たとえば、外形標準課税導入によって大きな影響を被ることになるベンチャー企業、第3セクター、海外のナショナル・プロジェクトの取り扱いなどについて、検討が必要となるものと思われる。

3.企業負担と税制

15年度税制改正では法人税率の引下げと、研究開発をはじめとする政策減税の双方の議論が行われ、結果的に1.2〜1.3兆円の規模の政策減税が実現した。
今後、経済活力の維持・強化を図る上で、社会保障負担を含めた企業負担全体の軽減を考えていかねばならない。税と社会保険料等の負担軽減と、直間比率の見直しなどの課題を両にらみしつつ、プライオリティを考えて取り組んでいく必要がある。その中で、当面の課題として、基礎年金公費負担の1/2への引上げの問題がある。
経産省としても、企業の社会保険料負担の軽減、給付の抑制と公費負担のあり方、年金税制の見直し(公的年金等控除の見直し、確定拠出年金拠出限度額の拡大、特別法人税の撤廃等)などについて、早急に考え方をまとめたい。
さらに、16年度税制改正を視野に入れて、法人税率引下げに具体的にどう取り組むかが重要な検討課題である。

4.金融課税について

15年度改正において、株式譲渡益、配当、株式投信の全てにわたり、5年間10%の軽減税率を実現することができた。今後、さらなる損益通算範囲の拡大などが課題である。
一方、米国は配当に対する二重課税の撤廃を打ち出しており、その動きを注視しつつ、わが国でも、企業の受取配当の取り扱いを含め、配当課税について十分議論していく必要がある。
欠損金の繰越・繰戻期間の取り扱いについては、金融機関だけでなく、事業会社全体の問題としてとり上げていく必要がある。

5.地方課税

固定資産税の見直しについては、昨年、経済界と一緒になって取り組んだが、実現できなかった。昨年の税制改正大綱では、3年に1度の見直しを待たずに検討することとされており、引き続き取り組んでいく。
また、地方法定外税が法人に対する課税に偏っており、地方自主財源の問題、地方交付税の縮小とあわせて、体系的に議論していく必要がある。

6.環境税

環境関連税制については、石油・石炭税が国会審議中であるほか、道路特定財源も5年延長が決定された。環境税論議が再燃しているが、石油・石炭税は、歳出面で環境省と共管になり、温暖化防止の具体的な対策はその中で実施可能である。さらなる課税はその後の問題であり、いたずらに上流課税がかからないよう、制度的な検討を進める必要がある。

7.その他

たとえば住宅ローン利子所得控除制度など、経済を活性化するための効果的な税制について考えていく必要がある。

II.意見交換要旨

1.日本経団連側

  1. 社会保障、税制など制度全体について、あるべき姿を描きながら、前進することが大切である。雇用を創出する企業への過大な課税を避け、諸外国同様、法人税負担を引き下げるべきである。同時に、連結付加税の撤廃、受取配当二重課税の是正、償却資産課税の見直し等が必要である。

  2. 企業がボーダーレスに動く中で、制度が不利益なところでは事業を継続できない。法人所得課税に加え、固定資産税、社会保険料負担等をあわせた議論が必要である。

  3. 経産省が企業の公的負担、社会保険料負担について問題意識を強く持ったことは重要である。医療制度改革、公的年金改革双方とも予断を許さない状況にあり、このままでは将来世代に負担を先送りすることになりかねない。国民全体で危機感を共有しつつ、年金・医療の給付や財政方式のあり方について、積極的に議論していく必要がある。地方税改革についても戦略的取組みが必要である。

2.今井課長

基礎年金の公費負担引上げについては、国民年金が未払いにより空洞化していることも踏まえ、改めて論点をしっかりさせる必要がある。
社会保険料負担の企業活動への影響について国民の理解を深める必要がある。保険料の上昇を抑えた上で、社会保障給付を削減するか、あるいは大きな政府とするかは、国民的な議論を通じた選択が必要である。また、企業が負担する各種保険の中にはすでに意義を失ったものもあり、行革の観点や電子政府の進展などを踏まえ、制度改革を迫っていくべきである。
現在、ミクロの実態を含め、企業負担に関する実態調査を進めているので、改めて議論したい。

《担当:経済本部》

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