経済くりっぷ No.19 (2003年4月22日)

3月26日/ボーゲル カリフォルニア大学バークレー校準教授との懇談会

新たな日米関係のあり方の検討が必要


スティーブン・ボーゲル カリフォルニア大学バークレー校政治学準教授が来日されたのを機に、同氏を招き、今後の日米関係などについて話をきくとともに懇談した。

○ ボーゲル準教授説明要旨

1.今後の日米関係

日米関係の今後10年間を展望し、過去50年間と異なる点として、第1に、日米関係がより不安定になることがあげられる。戦後、長期にわたり両国間の安定に寄与したサンフランシスコ体制は、冷戦終焉を始めとする環境変化に伴い、その維持が困難となっている。これは必ずしも両国の関係悪化をもたらすわけではないが、関係を安定させるためには一層の努力が必要となる。
第2に、安全保障では、より対立が増す。その理由として、日米安全保障体制に対する米国からの問い直しの声が強まることがあげられる。今後、米国は、日本に対してより大きな安全保障上の貢献を行うよう求めると考えられ、同体制のあり方に関する議論も高まることになる。同時に、日本がアジアにおける安全保障のリーダーシップをとることも期待されよう。
第3に、経済関係では対立が弱まる。その理由として、

  1. 米国経済の回復、
  2. 国際機構、多国間枠組みの役割の拡大、
  3. 両国経済の相互依存関係の強化、
  4. 日本国内での市場開放、構造改革に対する気運の高まり、
が指摘できる。

2.日本の課題

日本の抱える最近の課題として、まずイラク問題への対応があげられる。日本は当初、米国のイラク攻撃に懸念を表明していたが、結果的には支持を打ち出したため、日米関係は短期的にはより強化された。他方、米国によるイラク攻撃には問題もあった。第1に、未だ外交交渉の余地が残っていたこと、第2に、イラクはテロ組織ではなく国家であるため抑止力が効くこと、第3に、米国の単独行動は国連体制への打撃となること等である。
北朝鮮問題については、小泉首相の訪朝により新たな対話のパイプが構築されたが、現在ではこのパイプは機能しなくなっている。他方、同問題の解決が困難であるのは、北朝鮮と米国の間で、交渉方式や核問題について意見の相違が大きく、妥協できないことにあり、解決のためには、日本の仲介が不可欠となる。
さらに、中国の台頭への対応も重要となる。そのためにも、日本は日中の相互補完的な経済関係を深化させるとともに、強い日米関係を維持することが求められる。また、米国と協働し、中国をアジアの制度的枠組みに積極的に参加させることも重要である。

《担当:国際経済本部》

くりっぷ No.19 目次日本語のホームページ