経済くりっぷ No.20 (2003年5月13日)

4月8日/カイ ベトナム首相一行を迎えてのセミナー(進行 宮原賢次 日本ベトナム経済委員長)

日本とベトナムで成功を分かち合いたい


カイ首相

日本経団連では、来日中のファン・バン・カイ ベトナム首相、ヴォー・ホン・フック計画投資大臣をはじめとするベトナム主要閣僚、政府関係者、ビジネスマンなどベトナム側代表団総勢約130名を迎え、約400名の日本側参加者を得て、ベトナム投資セミナーを開催した。セミナーでは、奥田会長の歓迎挨拶、カイ首相、フック大臣のスピーチに続き、日本側を代表して、キヤノン、富士通、国際協力銀行から、ベトナムでのビジネス経験などについてのプレゼンテーションを行った。また、セミナー開催に先立って、ベトナム主要閣僚の参加のもと、「IT・ハイテク」「航空・観光」「農水産物貿易」の3つのワークショップによる、関連日本企業との活発な意見交換を行った。

I.奥田会長挨拶要旨

カイ首相ご一行の訪日を歓迎する。
ベトナムは日本企業にとり有望な投資先であり、将来性豊かな国である。小泉総理大臣との首脳会談で、日越投資協定が基本合意に達したときいており、さらなる日越経済関係の緊密化を期待している。昨年来の二輪車や四輪車の問題などについては、進出企業と協議を行っているときくが、こうした努力により、ベトナムの投資環境がさらに改善されることを期待している。日本経団連としても、奨学金や人材育成セミナーの開催など、ベトナムでの人材育成プログラムに取り組んでおり、ベトナムの経済発展のお手伝いをしたいと考えている。

II.カイ首相スピーチ要旨

ベトナムは、ここ数年、経済成長を続けているが、周辺諸国と比較すると、まだ経済レベルは低い。2020年までに近代化を達成することを目標に、現在、2010年までの経済発展計画を推進中である。
日本は、ベトナムにとり重要なパートナーである。われわれは、ベトナムに対する日本企業の積極的な姿勢を大いに評価しており、より一層の投資環境改善に向けた努力を行いたい。今回、両国政府間で、投資協定の基本合意が行われたことは、大変喜ばしい。両国のこれまでの貿易投資関係は、まだまだ拡大の余地がある。今後、相互の市場に参入できるような条件をお互いに提供しあいたい。また、ベトナムは現在、WTOへの加盟交渉を行っている。加盟にあたって必要な法的整備などを全力で行うので、日本の支持をお願いしたい。
午前中のワークショップでは、日本企業の率直な意見を聴取し、非常に有意義であったときいた。今後も、日越両国関係が長期的に発展することを確信している。

III.フック計画投資大臣スピーチ要旨

ベトナムは、過去10年間、年平均7〜8%の経済成長を達成した。政治とマクロ経済は安定しており、国内経済の改革と並行して、海外にも積極的に進出している。ベトナム政府は、国内経済の発展における外国投資の貢献を高く評価している。外資は、ベトナム経済において不可欠であり、ベトナムの工業総生産の35%、社会資本の20%、GDPの13%を占めている。とりわけ、日本はベトナムにとって最大の貿易相手国、ODA供与国であり、最大の投資国(実行ベース)でもあり、これまでの日本の協力を高く評価している。
ベトナムは、経済体制、投資環境の改善に取り組んでいる。第1に、法整備と市場経済メカニズム整備を優先的に行う。具体的には、企業の設立を容易にし、活動をしやすくする観点から、法の枠組みをつくりたい。また個人への所得税も改正し、外資がより多くのベトナム人を雇用することを推奨したい。
第2に、貿易投資の自由化を目指した市場管理体制を整備する。証券市場、不動産市場を整備し、サービス分野への外資誘致にも取り組む予定である。
第3に、多角的外交政策を堅持する。地域や国際機関にも積極的に参画し、国際的約束を遵守する。一部サービス市場へのアクセス制限を撤廃し、国内外の統一料金を適用する。二国間、多国間の約束に違反する規定があれば、直ちに改正する。
第4に、包括的な制度つくりに力を注ぐ。企業との対話を行いながら、国民と企業へのサービス向上に努め、汚職などに対しては厳格に対処する。
第5に、ベトナムの投資環境の改善を行う。公共料金、航空運賃などの外国企業に対する二重価格を、段階的に統一する。IT、大型機械など奨励分野での優遇措置を拡充し、奨励プロジェクトへの税制面での優遇を行う。
両国政府は、ベトナムでのビジネス上の問題を解決し、投資環境を改善するために、日越共同イニシアティブという新たな枠組みの立ち上げに合意した。本日、第1回会合を開催し、夏にハノイ、秋には東京で会合を開催する予定である。日本企業に、ベトナムの投資環境について建設的な意見を出してもらい、より良い投資環境をつくりたい。
昨日、日越投資協定が基本的合意に達したのは、大変喜ばしい。この協定は、日本企業がベトナムへ投資を行う上で、強力な法的根拠になる。ベトナム政府は、より多くの外資を誘致するため、投資環境を日々改善することを約束する。また貿易、観光面においても、日本との関係がより緊密化することを期待している。日越両国は、信頼できる安定的かつ長期的パートナーとして、成功を分かち合い、ともに発展していきたい。

IV.カイ首相閉会挨拶要旨

今回、ベトナムは、かつてない規模のミッションを派遣した。これは、日本の役割を高く評価している表れである。日本のODAはベトナムのインフラ整備や貧困撲滅など多くの分野で活用されており、日本政府の引き続きの支援に期待している。日本はベトナムにとって最大の貿易相手国であるが、まだそのポテンシャルに見合う規模となっておらず、ベトナムから日本への輸出の増加を強く希望する。
今年は、日越外交関係樹立30周年にあたる。両国関係の長期的かつ安定的発展に向けて努力したい。

《担当:国際経済本部》

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