経済くりっぷ No.20 (2003年5月13日)

4月8日/ラモス 元フィリピン大統領との昼食懇談会

経済統合に向けた動きが加速する東アジア


来日中のラモス元フィリピン大統領(第12代、在任1992年〜98年)を迎え、在日フィリピン共和国大使館、日本アセアンセンターとの共催で昼食懇談会を開催した。ラモス元大統領が「東アジアの安全保障と経済発展」と題して講演したほか、シアゾン駐日フィリピン大使、赤尾信敏日本アセアンセンター事務総長、奥田会長がそれぞれ挨拶を行った。

○ ラモス元大統領講演要旨

1.WTO加盟後の中国経済

中国のWTO加盟を契機に、世界経済における生産拠点および市場としての中国の役割の大きさが認識されるとともに、東アジア経済統合に向けた動きが活発化した。中国の豊富かつ安価な労働力と巨大な市場は、東アジア諸国にとって脅威であると同時にチャンスでもある。

2.東アジア経済統合に向けた動き

FTAA(米州自由貿易地域)創設やEU拡大に向けた動きが進む中、東アジアにおいても経済統合に向けた動きが加速している。
ASEANは、AFTA(ASEAN自由貿易地域)を通して生産拠点としてさまざまな機能を果たしてきた。また、中国はASEANとの間で、FTA(自由貿易協定)を10年以内に実現することで合意したほか、日本もASEANとの間で包括的経済連携に向けた検討を進めている。こうしたASEAN+1のプロセスが進み、ASEAN+日中韓の経済統合が実現すれば、東南アジア経済と北東アジア経済は、競合することなく、互いに補完しあうことができる。中国とASEANの貿易規模はまだ小さいが、中国とASEANを合計すれば、17億人の人口をかかえ、GNP 1兆7,000億ドル、貿易額 1兆3,000億ドルを有する地域となる。
また、地域経済統合は経済面のみならず、安全保障の観点からもメリットがある。経済統合による相互の信頼関係が、領土問題やその他の政治的な緊張関係を和らげる。9.11以降、各国政府は安全保障のためには多国間協力が不可欠であると認識し、東アジア諸国はより緊密な関係になった。

3.日本およびASEANの役割

現在、日本は、経済的な困難に直面しているが、その経済規模は4兆7,000億ドルであり、中国とASEANの合計の2倍以上にあたる。経済ならびに安全保障の観点から、東アジアのパワー・バランスを保つ上で、日本の果たすべき役割は大きい。
一方、これまでASEANは、東アジア外交における中心的な役割を担い、ASEAN首脳会議やASEAN地域フォーラムなど二国間、多国間の貴重な話し合いの場を提供するなど、地域における信頼醸成のハブとなってきた。
東アジア各国は、競争よりも協力関係を強化し、東アジア共同体の構築に向け努力していくことが重要である。

《担当:国際経済本部》

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