経済くりっぷ No.20 (2003年5月13日)

4月4日/教育問題委員会(共同委員長 樋口公啓氏、浜田 広氏)

教育基本法改正の方向性ならびに高等教育改革について

−文部科学省 御手洗事務次官よりきく


教育問題委員会では、文部科学省の御手洗康 事務次官を招き、中央教育審議会が取りまとめた答申「新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本計画の在り方について」の概要ならびに現在進めている高等教育改革の動きについて説明をきくとともに、意見交換を行った。

I.御手洗事務次官説明要旨

1.中央教育審議会答申の概要

2000年の教育改革国民会議報告で、教育基本法の見直しと教育振興基本計画の策定の必要性が提言され、中央教育審議会内で議論を重ねてきた。今般の答申で改正の必要性が指摘された主な点は、

  1. 「人格の完成」を目指すという現行法の基本理念に加えて、新しい時代にふさわしい理念を盛り込むこと、
  2. 大学や大学院の役割や私立学校の役割について規定すること、
  3. 教員が、研究と修養に励み、資質向上を図ることの必要性を規定すること、
  4. 宗教に関する寛容の態度や知識、宗教の持つ意義を尊重することの重要性を規定すること、
  5. 国と地方公共団体の各々の責務について規定すること、
  6. 教育振興基本計画の策定に関する根拠条文をおくこと、
などである。
理念を変えても教育や子どもは変わらないという理由から、教育基本法の改正に反対する向きもあるが、今回打ち出した理念を国民に浸透させて、具体的な教育改革につなげていきたい。改正に反対する野党があることや与党内にも慎重に検討すべきとの声があることから、国会への法案提出の日程は決まっていない。

2.高等教育改革について

2001年に発表した大学の構造改革の方針((1)国立大学の再編・統合、(2)「国立大学法人」への移行、(3)世界最高水準の大学の育成)の実現に向けて、鋭意取り組んでいる。国立大学の再編・統合によって、2002年度、2003年度の2年間で、4年制大学は、99から87に減少する。また、人事システムの非公務員化、予算や組織に関する規制の縮小など、国立大学の法人化に必要となる6つの法案を提出した。さらに、2002度から、研究面で優れた大学の研究教育拠点を重点的に支援する「21世紀COEプログラム」を実施している。
この他、大学の質を保証する新たなシステムとして、学部や学科の設置認可を弾力化したり、第三者評価(事後チェック)制度を導入することを予定している。

II.意見交換要旨

日本経団連からは、

  1. 教育の多様化、国際化に向けて具体的な施策を進めてほしい、
  2. 大学の会計を企業会計にあわせるなど、外部にわかる形にすべきである、
  3. 経営のできる教育者を育てることが重要である、
などの意見が出された。

《担当:社会本部》

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