経済くりっぷ No.20 (2003年5月13日)

4月15日/社会貢献担当者懇談会「変化する企業と社会貢献」(座長 島田京子氏)

ステークホルダーとの双方向コミュニケーションを考える

−「環境・社会報告書を読む会」から


社会貢献活動を継続して進めるには、幅広いステークホルダーの理解を得るために“見える活動”としていくことが重要である。また、近年は、企業の社会的責任に対する関心の高まりから、企業の社会性に関する情報を開示していく動きもある。そこで、当懇談会では、すでにいくつかの企業で実施している「環境・社会報告書を読む会」を題材に、ステークホルダーとの双方向のコミュニケーションのあり方について考える機会を持った。


本年2月18日、日産自動車と損害保険ジャパンは「環境・社会レポートを読む+質問する〜発行者との協働ワークショップ」を共催した。懇談会では、両社の担当者から当日の模様について話をきくとともに、読む会の進行役を務めた川北秀人氏より、中立的なファシリテーターが関与することの意義について説明を受けた。以下は三者の説明概要である。

1.双方向のコミュニケーションの必要性

企業が環境に関する情報を集めて報告書を出す動きは、1990年代後半に始まった。環境情報の開示に関心が高まり、情報の読み手が増えればコミュニケーション密度は薄くなる。さらに、情報開示の範囲は「企業の社会性」にも広がるが、逆に個々の読者が必要とする情報を受け取りにくい状況になっている。そこで、コミュニケーションを深めるために、読者と直接対話する場を設ける動きが出てきた。直接対話の場を設けることによって、企業は、質の高いフィードバック情報を、環境や社会性に関心の高い人々から得ることができるとともに、参加者が企業の取組みについてオピニオンリーダーとして情報発信してくれることも期待できる。

2.ワークショップ概要

参加者募集は2社同時で開始し、1週間で60名の定員に達した。参加者は企業、学生、NGO・一般が3分の1ずつ集まった。開催3週間前には両社の報告書を参加者に送り、事前に読んで質問を考えてきてほしいと依頼した。当日、各担当者からの説明をききながら、参加者はいいと思う点には赤ペンで、改善したい点には青ペンでコメントを報告書に記していく。これらの作業によって、総論的感想でなく、具体的な質問が出るようになる。説明後は、フリップ・ディスカッションとして、参加者がコメントや評価をカード用紙に書き、一斉に見せあい懇談していく。この時に、ファシリテーターの存在が重要となる。相手から直接きかれると攻撃と防御の関係になって引き出せないことも、中立的立場の人からきかれるなら率直に答えることができる。終了後、企業側には、参加者の詳細なコメントが入った報告書と、幅広い改善の指摘など質の高いフィードバック情報が残る。企業側の狙いと読者の期待のギャップをとらえ、今後の情報発信に活かしていくことが重要である。

《担当:社会本部》

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