経済くりっぷ No.21 (2003年5月27日)

4月24日/経済法規委員会企画部会(部会長 西川元啓氏)

株券を不発行とし、株式管理コストを削減

−2003年中に商法改正し、株券不発行制度・電子公告制度を導入


経済法規委員会企画部会では、このほど法制審議会会社法(株券の不発行等関係)部会が取りまとめた「株券不発行制度及び電子公告制度の導入に関する要綱中間試案」について、法務省の始関正光 民事法制管理官から説明をきいた。なお、企画部会では、4月28日、本中間試案について法務省に意見を提出した(10頁参照)。

○ 始関民事法制管理官説明要旨

1.株券不発行制度

昨年12月の規制改革の推進に関する第2次答申で、本年中の法案提出を求められている。夏には要綱案を取りまとめ、9〜10月には法案完成確定の運びとしたい。

(1) 株券不発行の目的
大きく以下の3つである。
  1. 株式発行コストの削減
  2. 株式取引決済の迅速化
  3. 株主管理事務の合理化

(2) 株券不発行会社は2種類
株券不発行会社には、振替制度(株式移転を口座振替の方法により行う制度)を利用する会社と利用しない会社の2種類を想定する。
振替制度を利用しない不発行会社(非公開会社を想定)は、株式名簿の記載を第三者対抗要件として株式譲渡を行うこととする。これは、現行の有限会社の持分譲渡に近い。
振替制度を利用する不発行会社(公開会社を想定)は、口座振替により株式譲渡を行うこととする。現行の一般社債の振替制度に似た仕組みである。

(3) 株券保管振替制度との違い
現行の株券発行を前提とした株券保管振替制度と試案の新振替制度との違いは、2つある。
1つめは、株券保管振替制度が単層構造であるのに対し、新振替制度は多層構造である。多層構造は、決済リスクが分散され、外国の証券決済システムとの連携が容易という特徴がある。
2つめは、口座簿に過大記帳が生じた場合の責任範囲限定制度(パーティション)である。過大記帳があった場合、口座管理機関は超過分の株式を取得して消却する義務を負うが、消却義務を果たせなかった場合、株券保管振替制度では全株主の権利が過大記帳された分一律に縮減されてしまう。一方、新振替制度では、消却できなかった場合でも、過大記帳した口座管理機関に加入する株主の権利だけが縮減される仕組みを考えている。

(4) 過大記帳が生じた場合の議決権
縮減の結果、発生した端数や単元未満株については、通常与えられない一未満の議決権を認めることを提案している。この意味で、発行会社への影響はないわけではない。しかし、基準日に過大記帳は必ず認識されると想定できるので、基準日から2週間以内に消却できれば、超過分は最初から生じなかったものとみなすという手当てをしている。また、口座管理機関が消却義務を円滑に果たせるように、自己株式処分規制の手続きを経ずに、発行会社が自己株式を公正価格で口座管理機関に譲渡できることを考えている。

(5) 株主管理事務の合理化
株券不発行制度導入により、実質株主名簿は不要となり、管理事務の合理化が図られると期待される。
代わりに、株主名簿と振替口座簿による管理となる。

(6) 単独株主権・少数株主権の行使方法
単独株主権・少数株主権のような株主ごと個別に権利行使する場合において、その時点での株主が誰か、当該株主が継続保有要件を満たしているかを、どのように確認するかが問題となる。
これには、2つの対応を示した。
1つは、振替口座簿基準である。口座振替機関の口座簿に記載された時点で、権利を認めようというものである。発行会社には、振替口座簿の閲覧権があり、随時、継続保有性を確認できる。
もう1つは、株主名簿基準であり、株主名簿に記載された時点で権利を認めるものである。継続保有期間は、会社が株主名簿の記載を認識できた時点から起算することになる。

(7) 株券不発行会社への移行の仕方
2つの案がある。
1つは、公開・非公開にかかわらず、各社の定款自治に委ねるという案である。
もう1つは、非公開会社については定款自治に委ねるが、公開会社については、改正法施行後の一定日に、定款に不発行の定めをしたものとみなし、一斉に不発行制度に移行するという案である。昨年の日本経団連コメントは、後者支持であった。

2.電子公告制度

本制度についても、本年中の法案提出を求められている。

(1) 導入の目的
目的は以下の2つである。
  1. インターネット時代に対応した周知性の高い公告の実現
  2. 公告コストの削減

(2) 具体的内容
会社は、一定期間継続して、インターネットにより電子公告を行う。
一定期間継続して電子公告されているかについては、証明機関が調査し、証明する。ただし、決算公告については、現行の電磁的公示制度と同様に証明機関による証明は不要としている。
サーバーダウン等一時的な公告中断に対しては、一律に当該公告を無効とせず、救済措置を用意している。

(3) 債権者保護手続における個別催告の省略等
合併・会社分割等の際に必要とされる債権者保護手続きについて、官報公告(電子官報による公告を含む)を利用することにより、債権者に対する個別催告を省略・簡素化していく。
《担当:経済本部》

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