経済くりっぷ No.22 (2003年6月10日)

5月28日/PFIセミナー

民間の創意工夫を活かしたPFI事業の推進に向けて


日本経団連では、日本PFI協会との共催にて「PFIセミナー」を開催した。当日は、建築家の黒川紀章氏、英国の建築評論家デニス・シャープ氏による基調講演、日本PFI協会の植田和男専務理事によるPFIの現状と課題の説明に引続き、民間企業、政府、地方公共団体の有識者によるパネルディスカッションが行われ、650人を超える参加者のもと、白熱した議論が展開された。

I.平島国土・都市政策委員長開会挨拶要旨

日本経団連では昨年6月に取りまとめた「PFIの推進に関する第二次提言」においてPFI事業が直面するさまざまな課題を明らかにし、その改善に向け関係各方面と折衝を続けてきた。その結果、事業者選定手続については日本経団連の要望が反映された形で改善が見られたが、今後、税制面などで残された課題に取り組んでいく必要がある。

II.黒川氏基調講演要旨

文化と経済は表裏一体の関係にあり、今後日本経済を再生させるためには文化の育成が必要である。わが国では、いわゆる「ハコモノ」を造ることを批判する風潮があるが、それはとんでもない誤解である。「世界遺産」に登録され、人々を魅了している歴史的建造物も、「ハコモノ」に他ならない。重要なことは、地域の特性を活かし、人々の交流や文化の創造の拠点となる良質な建築物を造ることである。例えば、スペインのビルバオ市は美術館の建設を含む総合的な都市開発によって観光客を誘致し、街の活性化に成功している。
PFIは資金面のみならず、設計、運営等全ての側面で民間が公共事業に関与する画期的なものである。国・地方の財政が悪化し、公共事業を民間に依存せざるを得なくなったことがPFI導入の最大の要因である。他方、民間金融機関も従来の土地を担保とした融資に加えて、徐々にではあるが、事業収益のみから資金を回収するプロジェクト・ファイナンスを実行するようになっており、これもPFI推進の要因となっている。
PFI事業にはさまざまな種類があり、それによって民間企業の関わり方も違ってくる。博物館のように地域の特性を活かすべき事業については当該地域の有識者の積極的な関与が必要な反面、オフィスビル等については民間企業の創意工夫を最大限発揮できるよう、性能発注とすべきである。

III.植田専務理事説明要旨

PFI事業を円滑に推進するためには、契約書において当事者間でリスク分担と責任を明確にしておくことが重要であり、リーガルマインドの徹底が求められている。
質の高いPFI事業を展開するためにはプロジェクトの非価格的要素が重要である。しかし、入札においてはコスト面が過度に重視される傾向があり、「安かろう、悪かろう」を防止する上で改善の余地が大きい。
さらには、民間発案型のPFI事業についても、今後積極的に手がけていくべきである。

《担当:産業本部》

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