経済くりっぷ No.22 (2003年6月10日)

5月19日/松尾OECD科学技術産業局長との懇談会(座長 根上卓也OECD諮問委員会委員長代行)

日本経済にはマクロ面の構造改革も必要


OECDにあって、情報通信技術、科学技術、イノベーション、ベンチャーなど多岐にわたる政策を担当する松尾隆之科学技術産業局長が来日されたのを機に、同氏を招き、OECDのミクロ分析などについて話をきくとともに懇談した。

I.松尾局長説明要旨

現在、日本は不良債権処理をはじめ、経済・財政のマクロの構造改革を進めているが、ミクロの面でも、必要な改革を行い、成長のエンジンとしなければならない。
1980年代と1990年代の間に、OECD加盟諸国の生産性に歴然とした差がついた。米国、カナダ、英国、豪州が生産性を伸ばしたのに対して、ドイツ、フランス、イタリア、特に日本が下げている。OECDでは、この要因を

  1. ICT(情報通信技術)、
  2. 科学技術、
  3. 人的資源、
  4. 企業育成策、
の4分野に対する政策の相違ととらえ、ミクロの面から分析を行った。
この4分野の政策について、各国それぞれ良い所と悪い所がある。わが国でいえば、民間のR&DはOECD加盟国でトップであるが、それを生産性に結びつけるインターフェイスが弱い。ITでも、ブロードバンドでは世界のトップランナーだが、それを利用する力が弱い。
他国のBest Practice(政策効果)から謙虚に学び、自国の長所をさらに伸ばしながら、短所を着実に改善することが極めて重要である。OECDの各種の報告・統計はそのために役立つ。
また、こうした分野の政策は密接に関連しているので、官邸の主導の下、関係省庁が一致協力して、規制改革をはじめとする政策を進めていく必要がある。その際、他国の政策は大いに参考になる。例えば豪州は、首相自らがイノベーション政策について、予算配分から政策の実行、評価に至るまで強力なリーダーシップを発揮しており、これが生産性の目覚しい向上に貢献している。

II.意見交換(要旨)

日本経団連側:
わが国の競争力強化のためには、もっと政府と民間の連携が必要ではないか。

松尾局長:
米国は1980年代、政府と民間が一体となって猛烈に競争力の強化に努めた。EUでも、リカネン委員のもと、企業政策、電子商取引、科学技術等の部署を統合して、競争力の強化に着手し始めている。日本においても、国際的な視野からの企業改革や、規制改革をはじめとする構造改革を着実かつ大胆に進めるのと同時に、それらを巧みに結びつけて、トータルの競争力、生産性の向上につなげていく総合的な戦略を描く必要がある。
《担当:国際経済本部》

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