経済くりっぷ No.23 (2003年6月24日)

6月3日/関西会員懇談会

民主導・自律型の経済社会の実現を目指して


「民主導・自律型の経済社会の実現を目指して」をテーマに、標記懇談会が大阪市内で開催された。当日は、奥田会長、槙原・香西・千速・御手洗・柴田・三木・宮原・庄山・西岡・武田の各副会長が出席し、関西地区会員約200名の参加のもと、活発な意見交換が行われた。

○ 発言要旨

I.関西会員

1.関西経済の現状と課題
  柿本寿明 日本総合研究所理事長

関西経済の現状は、地盤沈下が長期にわたって継続している。最近では、アジア向けの輸出が好調で、生産は全国を上回る伸びを示しているが、所得、雇用は全国で最も厳しく、消費も低迷している。さらにSARSやりそな銀行の実質国有化による影響が懸念される。
今後の課題としては、政策サイドにおいて、第1に、小泉内閣はデフレ克服を最優先課題とする政策転換を宣言し、先行減税等デフレ・スパイラル防止のための総合対策を総動員すべきである。第2に、「破壊」先行の「悪い構造改革」ではなく、「創造」優先の「良い構造改革」を推進すべきである。また、民間サイドとしては、第1に、産学連携の強化やビジネス・エンジェルの活性化による新産業・新事業の創造に注力すべきである。第2に、アジア企業等の関西進出を応援すべく、誘致に向けた適切なコンサルトを実施する必要がある。

2.都市再生−魅力ある街づくり−
  吉田二郎 南海電気鉄道会長

当社では、難波駅前の大阪球場跡地を「なんばパークス」と名付け、本年10月の開業を目指し再開発事業を行っている。自然を取り入れ環境にも配慮した賑やかでバラエティに富んだ、楽しい街になることを目指している。
こうした再開発事業を促進させるためには、公共施設の設置等について、開発事業者の負担を軽減すべきである。さらに、規制を緩和するという統制的な考えから、民間事業を支援する積極的な施策、あるいは税制の優遇策や需要を喚起する施策への転換が必要である。
関西国際空港については、公害防止のためにコストの嵩む海上に建設した経緯を勘案して、公害防止費用分を国が負担する支援体制を整備すべきである。また、巨額の費用を投じた最新鋭施設の活用策を、国家施策として検討すべきであり、日本経団連に引き続きご支援をお願いしたい。

3.技術・研究開発の強化
  桑野幸徳 三洋電機社長

わが国工業製品の競争力低下が著しい。日本企業がグローバル競争において、生き残っていくためには、量から質(高付加価値)への転換が必要である。具体的には独自性のある新技術の創出・育成が重要である。日本には新材料・ナノテク等の分野で新技術の種があり、これらを新商品・新事業に結びつける技術・研究開発の強化が図られるべきである。
当社では、有機EL・青紫色半導体レーザーなどの新技術をベースとして、3〜5年後に100億〜500億円規模の新事業を約10件育成し、2005年度に4,500億円の売上を目指している。
また、新事業・新産業の創出には、産学官一体となった取組みが必要であり、大学には新事業・新産業の種となる新技術の開発を、国には規制緩和や法令整備、さらには税制面での優遇策などをそれぞれお願いしたい。

4.グローバル戦略と技術革新
  家次 恒 シスメックス社長

当社は、血液や尿の分析機器や試薬の製造販売をしている神戸の会社である。
医療分野においては、諸外国で医療改革や医療制度の進展が図られてきたが、日本では先送りされてきた。そのため日本企業は国際的に厳しい経営環境にあり、国際競争力を強化していく必要がある。
当社の具体的な取組みとしては、グローバルニッチ領域の強化、強みを生かしたアライアンスの提携、地理的・歴史文化的近接性を活かしたアジアマーケットへの積極的な参入、ライフサイエンスのビジネス展開等があげられる。
神戸では、医療産業都市構想や経済特区認定によって医療産業クラスターが形成されつつある。神戸がアジアのメディカルセンターになるよう今後も努力していきたい。

5.技術開発、産学官の連携強化等について
  奥田貞人 TOWA社長

中堅・中小企業の立場からみると、関西地域の活性化のためには、産学官連携を有効活用して、技術開発を進め、地域密着型の新規事業を興していくことが必要である。加えて、地域としての総合的な連携推進という観点から、産学官連携は・産学公連携・と表現したい。
京都では、本年2月に「京都産学公連携機構」を設立し、企業・大学・行政が一枚岩となった「オール京都の体制づくり」を目指している。当面、

  1. 企業と大学のマッチング情報の集積および提供、
  2. ビッグプロジェクト誘致のための地元体制の整備、
  3. 産と学のコーディネート、
に取り組んでいく。
このような産学公連携の仕組みが、日本経団連主導で全国各地に立ち上がり、技術開発をテコにした地域活性化の起爆剤になるよう期待したい。

6.フロア発言

自由討議において、

  1. FTA戦略におけるオセアニア諸国との関係について、
  2. 奥田ビジョンに対する国民的コンセンサスの実現、および戦略的な航空政策の必要性について、
それぞれ発言があった。

II.日本経団連側

槙原副会長より「わが国通商政策の課題」、柴田副会長より「規制改革への取組み」、御手洗副会長より「コーポレート・ガバナンスと会社法の改正」についてそれぞれ活動報告があった。また意見交換において、千速副会長より「新事業・新産業創出の重要性」、宮原副会長より「都市再生に向けた取組み」、庄山副会長より「産学官連携による産業技術人材の育成強化」についてそれぞれ発言があった。
最後に、奥田会長より、関西の“元気”というスローガンを踏まえつつ、個々の企業が前向きな気持ちで懸命に取り組むことが必要であり、そのような個々の企業の取組みの集積が、地域経済の発展に繋がるとの総括があった。

《担当:総務本部》

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